第56回

第56回理学療法士国家試験 午前問題89

進行性核上性麻痺について正しいのはどれか。

  1. 延髄が萎縮する。
  2. L-Dopaが著効する。
  3. 頸部が前屈位となる。
  4. 垂直方向の眼球運動障害を呈する。
  5. MIBG心筋シンチグラフィーで心/縦隔比が低下する。

解答解説

正解は4.垂直方向の眼球運動障害を呈するです。
進行性核上性麻痺(PSP)は、垂直方向(特に下方)の眼球運動障害が特徴的です。この症状は中脳の神経核(特に上丘)の障害によるものです。その他、姿勢保持障害や認知機能低下などが進行性に現れる疾患です。

選択肢の解説

  1. 延髄が萎縮する。
    PSPでは中脳の萎縮が特徴的で、延髄萎縮は目立ちません。延髄萎縮はむしろ筋萎縮性側索硬化症(ALS)などに関連する症状です。この選択肢は誤りです。
  2. L-Dopaが著効する。
    PSPではパーキンソン病と異なり、L-Dopaの効果は乏しいです。ドパミン神経系以外の広範囲な障害が関与しているためです。この選択肢は誤りです。
  3. 頸部が前屈位となる。
    PSPでは頸部が後屈する特徴があります。これはパーキンソン病の前屈位とは対照的です。この選択肢は誤りです。
  4. 垂直方向の眼球運動障害を呈する。
    PSPの診断で特に重要な所見であり、下方への眼球運動障害が初期症状として現れることが多いです。この選択肢が正しいです。
  5. MIBG心筋シンチグラフィーで心/縦隔比が低下する。
    MIBG心筋シンチグラフィーで心/縦隔比が低下するのは、主にパーキンソン病に特徴的な所見であり、PSPでは通常低下しません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

進行性核上性麻痺(PSP)は、垂直方向の眼球運動障害、頸部後屈、姿勢保持障害が主要な特徴です。パーキンソン病と症状が重なる部分も多いため、鑑別点(眼球運動障害やL-Dopa抵抗性)をしっかり覚えておくと診断に役立ちます。