第56回

第56回理学療法士国家試験 午後問題9

22歳の女性。重量物を持ち上げたことにより腰痛が出現し、翌日腰部筋筋膜炎と診断された。この患者に対する超音波治療で正しいのはどれか。

  1. 強度を3.0W/cm²とする。
  2. 周波数を1MHzとする。
  3. 照射時間率を100%とする。
  4. 導子を皮膚面から5cm離す。
  5. ビーム不均等率〈BNR〉の導子を固定法で使用する。

解答解説

正解は2.周波数を1MHzとするです。

超音波治療において、周波数1MHzは深部(約2~5cm)の組織に対する加熱効果を得るために適しています。今回の患者は腰部筋筋膜炎であり、筋膜など比較的深い部位を治療対象とするため、1MHzが正しい選択です。

選択肢の解説

  1. 強度を3.0W/cm²とする。
    超音波治療の一般的な強度は0.5~1.5W/cm²です。3.0W/cm²は過剰な強度であり、皮膚や深部組織の損傷を引き起こすリスクが高まります。この選択肢は誤りです。
  2. 周波数を1MHzとする。
    1MHzは深部組織(筋膜や深層筋など)に対する治療に使用される周波数です。腰部筋筋膜炎では、この周波数が適しています。正解です。
  3. 照射時間率を100%とする。
    照射時間率(デューティサイクル)が100%の場合、超音波は連続波として出力され、熱効果が強調されます。しかし、急性炎症や初期治療では、間欠波(照射時間率20~50%)を用いて加熱を抑え、炎症を軽減することが推奨されます。この選択肢は誤りです。
  4. 導子を皮膚面から5cm離す。
    超音波導子は皮膚に直接接触させる必要があります。5cmも離すと、超音波エネルギーは効果的に伝達されず、治療効果が得られません。この選択肢は誤りです。
  5. ビーム不均等率〈BNR〉の導子を固定法で使用する。
    超音波治療では、導子を皮膚上で常に動かしながら使用します。固定法は局所的なエネルギー集中を招き、組織損傷のリスクが高まります。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

超音波治療では、周波数、強度、デューティサイクルを患者の状態や治療目的に合わせて設定することが重要です。特に周波数は、1MHzが深部組織、3MHzが浅部組織に適用されることを覚えておきましょう。また、導子は皮膚に密着させ、常に動かすことで安全かつ効果的な治療が可能になります。