第57回

第57回理学療法士国家試験 午前問題48

認知症患者の運動療法を行うときの対応として適切でないのはどれか。

  1. 肯定語で指示する。
  2. 患者のペースに合わせる。
  3. 同じ動作を繰り返し実施する。
  4. 運動を拒否しても説得して行う。
  5. 日常慣れ親しんだ動作を利用する。

解答解説

正解は4. 運動を拒否しても説得して行うです。

認知症患者に対する運動療法では、患者の意思や感情を尊重することが最も重要です。運動を拒否している状態で無理に説得しようとすると、患者の不安や混乱を招き、逆効果になることがあります。その場合は、別のタイミングで患者が受け入れやすい方法や雰囲気を整えて再試行することが適切です。

各選択肢の解説

  1. 肯定語で指示する。
    認知症患者に対しては、否定的な表現よりも肯定的な表現を用いることで混乱を防ぎ、理解を助けます。たとえば「できない」という言葉を避け、「やってみましょう」と声をかけることが推奨されます。この選択肢は適切です。
  2. 患者のペースに合わせる。
    認知症患者には、個人のペースや状態に合わせた介入が重要です。焦らず、ゆっくりとしたテンポで進めることで、患者の理解や協力が得やすくなります。この選択肢は適切です。
  3. 同じ動作を繰り返し実施する。
    認知症患者には新しい動作を覚えるのが難しい場合が多いため、同じ動作を繰り返し行うことで安心感を与え、運動への参加意欲を高めることができます。この選択肢は適切です。
  4. 運動を拒否しても説得して行う。(正解)
    患者が運動を拒否している場合には、その理由を理解し、無理強いせずに別のアプローチを試みるべきです。説得は逆効果になる場合があるため、他の方法を模索します。この選択肢は不適切です。
  5. 日常慣れ親しんだ動作を利用する。
    認知症患者には、日常的に慣れ親しんだ動作を利用することで、運動に取り組みやすくなります。たとえば、椅子からの立ち上がりや歩行の練習など、生活に密着した動作が効果的です。この選択肢は適切です。

ワンポイントアドバイス

認知症患者の運動療法では、「安心感」と「成功体験」を提供することが重要です。肯定的な声かけや慣れ親しんだ動作を活用し、患者の意思を尊重しながら進めましょう。拒否された場合には、無理をせず、環境や方法を工夫して取り組む姿勢が求められます。