第57回

第57回理学療法士国家試験 午前問題15

脊髄損傷患者のトランスファーボードを用いたベッドから車椅子への移乗動作を図に示す。この動作を獲得目標とする機能残存レベルはどれか。

  1. C4
  2. C5
  3. C6
  4. C7
  5. C8

解答解説

正解は3. C6です。

トランスファーボードを用いた移乗動作を行うには、上肢の筋力がある程度必要です。特に、この動作では肩関節、肘関節、手首の機能を利用して体を支えることが重要であり、C6レベルではこれが可能です。C6レベルでは手関節伸展筋(伸筋群)が機能するため、テンodesisグリップ(伸筋群を利用して指を固定する方法)を活用することで、移乗の際に安定性を確保できます。

各選択肢の解説

  1. C4
    C4レベルでは横隔神経が残存しているため、呼吸はある程度可能ですが、上肢の機能は大きく制限されます。このため、自立した移乗動作を行うことはできません。
  2. C5
    C5レベルでは肩関節外転や肘関節屈曲(上腕二頭筋)が可能ですが、手関節の伸展機能がないため、テンodesisグリップを利用した移乗動作は困難です。このため、トランスファーボードを用いた移乗の自立は難しいです。
  3. C6(正解)
    C6レベルでは手関節伸展筋(長橈側手根伸筋など)が機能します。これによりテンodesisグリップが使用可能となり、手を安定的に利用してトランスファーボードを操作しながら移乗動作を行うことが可能になります。したがって、図の動作が獲得目標として設定される適切なレベルです。
  4. C7
    C7レベルでは肘関節伸展筋(上腕三頭筋)が機能するため、より安定した移乗動作が可能となります。しかし、C6レベルでもこの動作を行うことは可能であり、C7より低いレベルが目標となります。
  5. C8
    C8レベルでは指の屈筋群が機能するため、物を握る力が増し、移乗動作がより容易になります。ただし、この動作はC6レベルでも獲得可能であるため、C8は目標として高すぎます。

ワンポイントアドバイス

C6レベルの患者におけるトランスファーボード移乗のコツは、テンodesisグリップの習得と上肢筋力の強化です。また、実際のリハビリでは体幹や肩周りの安定性を向上させるトレーニングを併用することが有効です。