73 歳の女性。胸部単純エックス線写真(別冊No. 5)を別に示す。
考えられる疾患または状態はどれか。
1. 気 胸
2. 間質性肺疾患
3. 気管切開術後
4. 肺葉切除術後
5. 慢性閉塞性肺疾患
解答解説
正解は 2.間質性肺疾患 です。
胸部X線写真を見ると、両側の肺野に広がる網状陰影やすりガラス様陰影が確認されます。このような所見は間質性肺疾患(ILD: Interstitial Lung Disease)で見られる典型的なパターンです。間質性肺疾患では、肺の間質(肺胞や肺胞壁などの支持組織)に線維化が生じ、X線でびまん性の陰影が見られます。代表的な間質性肺疾患には特発性肺線維症(IPF)などがあり、進行すると肺の線維化が強まり、呼吸機能が低下します。
選択肢の解説
- 気胸: 気胸では肺が虚脱するため、片側の肺が縮み、虚脱側の胸腔内にガスが溜まるための明瞭な透過性が見られることが一般的です。今回のX線所見は、両側にびまん性の陰影が認められるため、気胸には該当しません。
- 間質性肺疾患: 正解です。間質性肺疾患では肺の間質に線維化が進行し、両側肺に網状やすりガラス様の陰影が広がる所見がみられます。今回のX線写真の所見はこの特徴と一致します。
- 気管切開術後: 気管切開術後のX線写真では、気管切開チューブや気管の形状に変化が見られることがありますが、今回のような両側のびまん性陰影は特徴ではありません。
- 肺葉切除術後: 肺葉切除術後は、切除された側の肺野が縮小し、胸腔内の空間が変化することで反対側に偏位が見られることが多いです。両側にびまん性の陰影がある今回の所見とは一致しません。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD): COPDでは過膨張による肺野の透過性亢進や横隔膜の平坦化が見られることが一般的です。今回のようなびまん性の陰影はCOPDに特有の所見ではありません。
ワンポイントアドバイス
間質性肺疾患は肺の線維化が進行する疾患群で、典型的なX線所見として両側肺野における網状・すりガラス様陰影が見られます。X線でこのようなびまん性の変化が確認される場合は、肺機能検査や高分解能CT(HRCT)でさらに詳しい評価を行うことが推奨されます。