第59回

第59回理学療法士国家試験 午前問題18

74 歳の女性。脳梗塞による左片麻痺。発症後 3 か月。平行棒内立位保持練習では重心が左側に偏り、平行棒に骨盤が寄りかかるような姿勢を呈する。
この症状を改善するための理学療法で正しいのはどれか。

1. 骨盤を左から右方向へ押す。
2. 右上肢で前方向へのリーチ運動を行わせる。
3. 前方に鏡を置き立位姿勢の傾きを認識させる。
4. 左下肢に膝装具を装着し立位保持練習を行う。
5. レイミステ現象を利用して左股関節内転筋を強化する

解答解説

正解は 3.前方に鏡を置き立位姿勢の傾きを認識させる です。

この患者は、脳梗塞による左片麻痺の影響で、立位時に重心が左側に偏っており、平行棒に骨盤を寄りかからせる姿勢を取っています。このような症状では、自己の姿勢の偏りを視覚的に認識させることが効果的です。鏡を前方に置き、立位姿勢の傾きを確認させることで、重心を中央に戻す意識を高め、正しい立位保持の感覚を身に付けやすくなります。

選択肢の解説

  1. 骨盤を左から右方向へ押す: セラピストが直接骨盤を押す方法は一時的に体の位置を調整できますが、患者が自分で重心を感じて調整する力は育ちにくく、再現性が低いです。また、押す力が過剰だと患者のバランスを崩すリスクがあるため、根本的な改善にはつながりにくいです。
  2. 右上肢で前方向へのリーチ運動を行わせる: 右上肢で前方向へリーチ運動を行うと、重心はさらに左側に偏る可能性があり、かえって重心のアンバランスが悪化するおそれがあります。この症例では、まず重心を中央に戻す練習が優先されるべきです。
  3. 前方に鏡を置き立位姿勢の傾きを認識させる: 正解です。前方の鏡を用いて自分の姿勢を視覚的に確認することで、患者は自身の重心の偏りを認識しやすくなります。この方法により、重心のコントロールを学び、正しい立位保持の感覚が向上します。
  4. 左下肢に膝装具を装着し立位保持練習を行う: 左下肢に膝装具を装着することで、左膝の安定性を補助できますが、重心偏位の改善には直接的な効果がありません。まずは重心を中央に戻す練習が必要です。
  5. レイミステ現象を利用して左股関節内転筋を強化する: レイミステ現象は、麻痺側の四肢に共同運動や連動が生じる現象です。しかし、この現象を利用して左股関節内転筋を強化することは、重心偏位の改善には直接的には効果が少ないと考えられます。

ワンポイントアドバイス

片麻痺患者の重心偏位に対するリハビリテーションでは、まず患者に自分の姿勢の偏りを認識させることが重要です。鏡を使って視覚的なフィードバックを与えることで、自分で重心を調整する力が養われます。