2 84 歳の男性。心疾患の既往はない。転倒して右大腿骨近位部骨折を受傷し、緊急で骨接合術を受けた。翌日離床を目的に理学療法が処方されたが、右下腿の腫脹と圧痛を訴えている。
最も優先的に確認すべき血液検査項目はどれか。
1. BNP
2. D ダイマー
3. HbA1c
4. PT-INR
5. SP-D
解答解説
正解は 2.D ダイマー です。
解説:右大腿骨近位部骨折を受傷し手術を受けた高齢者が、術後に下腿の腫脹と圧痛を訴えているため、**深部静脈血栓症(DVT)**の発生が強く疑われます。DVTは長時間の臥床や術後の安静によってリスクが高まり、特に下肢手術後には優先的に注意が必要です。Dダイマーは血栓形成・分解があると増加するため、DVTの評価に重要です。その他の項目も検討しますが、DVTのスクリーニングとしてDダイマーの確認が最も適しています。
選択肢の解説
- BNP
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心不全の評価に使用されます。心疾患の既往がない患者であり、心不全の兆候もないため、優先的な検査項目には該当しません。 - D ダイマー
Dダイマーは血栓形成後にフィブリンが分解される際に増加するため、深部静脈血栓症や肺塞栓症のスクリーニングに用いられます。術後であり、下腿に腫脹と圧痛があるこのケースでは、Dダイマーの確認が優先されます。 - HbA1c
HbA1cは血糖コントロールの指標であり、糖尿病の診断や治療の評価に用いられます。この患者の症状とは直接関係がないため、優先的に確認する必要はありません。 - PT-INR
PT-INRは血液凝固能を評価するための指標で、抗凝固療法の効果や出血リスクの評価に使用されます。しかし、DVTのスクリーニングには直接関係しないため、優先度は低いです。 - SP-D
SP-D(サーファクタントプロテインD)は肺炎や肺疾患の評価に使用されます。肺の状態評価に有用ですが、この症状に対して優先的に確認する項目ではありません。
ワンポイントアドバイス
深部静脈血栓症(DVT)は術後安静を要する高齢者に特に注意が必要な合併症です。Dダイマーはスクリーニング検査として用いられますが、確定診断にはエコー検査や血管造影が必要です。臨床症状や術後背景を踏まえて迅速に評価を行い、必要であれば予防的な抗凝固療法も検討します。