Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸管理について正しいのはどれか。
- 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適応ではない。
- 舌咽呼吸は強制的に吸気する最大量を得るのに有効である。
- 咳最大流量(cough peak flow)は咳介助を行う目安にならない。
- 呼吸管理の適応になる時期は機能障害度ステージⅣからである。
- 排痰補助装置による咳介助は徒手による咳介助に優先して行われる。
解答解説
正解は2. 舌咽呼吸は強制的に吸気する最大量を得るのに有効であるです。
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は進行性の筋疾患で、呼吸筋の筋力低下による呼吸不全が最終的な課題となります。舌咽呼吸(グロッソファリンジアルブリージング)は、喉や舌を使って空気を飲み込むように送り込み、吸気容量を増大させる方法として有効です。
各選択肢の解説
- 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適応ではない。
DMDでは呼吸筋が徐々に弱くなり、夜間低酸素血症や呼吸不全が進行します。このため、NPPVは重要な治療手段であり、適応となる場合が多いです。この選択肢は誤りです。 - 舌咽呼吸は強制的に吸気する最大量を得るのに有効である。(正解)
舌咽呼吸(グロッソファリンジアルブリージング)は、呼吸筋が弱くなった患者が強制吸気容量(MIC:maximum insufflation capacity)を確保するための訓練法です。吸気容量を増大させるのに有効であり、DMDの呼吸管理で推奨される場合があります。この選択肢が正解です。 - 咳最大流量(cough peak flow)は咳介助を行う目安にならない。
咳最大流量(CPF)は、咳の有効性を評価する重要な指標であり、咳介助を行う目安として用いられます。具体的には、CPFが270 L/min未満の場合に咳介助が必要とされます。この選択肢は誤りです。 - 呼吸管理の適応になる時期は機能障害度ステージⅣからである。
DMDの呼吸管理は、機能障害度ステージ(Vignosの分類)Ⅳに限定されるものではありません。呼吸機能の低下が認められる早期から、NPPVや呼吸訓練が開始されます。この選択肢は誤りです。 - 排痰補助装置による咳介助は徒手による咳介助に優先して行われる。
排痰補助装置(Mechanical Insufflation-Exsufflation)は有効な手段ですが、徒手咳介助が先行される場合もあります。どちらを優先するかは患者の状態や医療環境によります。この選択肢は誤りです。
ワンポイントアドバイス
DMDの呼吸管理では、NPPVによる呼吸サポート、舌咽呼吸訓練、排痰補助装置の活用が重要です。また、咳最大流量(CPF)が低下した場合は咳介助を行い、気道クリアランスを維持することが患者の生命予後に直結します。患者個々の状態に応じた段階的な介入が必要です。