第57回

第57回理学療法士国家試験 午前問題44

脊髄損傷(第6頸髄節まで機能残存)患者で自立が最も困難なのはどれか。

  1. 自動車の運転
  2. 車椅子のキャスター上げ
  3. 車椅子で5cmの段差昇降
  4. 床面から車椅子への乗り移り
  5. ベッドから車椅子までの側方移乗

解答解説

正解は4. 床面から車椅子への乗り移りです。

第6頸髄節まで機能が残存している場合、主に肩、肘の屈曲が可能ですが、手指の屈曲や伸展、体幹の安定性は失われています。そのため、腕の力を利用した動作は可能ですが、体幹の安定性を必要とする「床面からの車椅子への乗り移り」は非常に困難です。

各選択肢の解説

  1. 自動車の運転
    第6頸髄節まで機能が残存していれば、肩と肘の屈曲を活用し、専用のハンドコントロール装置を使って運転することは可能です。この選択肢は誤りです。
  2. 車椅子のキャスター上げ
    腕の筋力が残存しているため、車椅子のキャスター上げは可能です。ただし、力のコントロールに工夫が必要ですが、自立できる可能性が高いです。この選択肢は誤りです。
  3. 車椅子で5cmの段差昇降
    段差昇降はキャスター上げができる前提で可能となります。第6頸髄節残存ではキャスター上げができるため、段差昇降も可能ですが、技術とトレーニングが必要です。この選択肢は誤りです。
  4. 床面から車椅子への乗り移り(正解)
    床面から車椅子への乗り移りでは、腕力と同時に体幹の安定性が求められます。第6頸髄節残存の場合、体幹の支持力がなく、バランスが取りづらいため、自立は非常に困難です。この選択肢が正解です。
  5. ベッドから車椅子までの側方移乗
    ベッドから車椅子への側方移乗は、腕の力を利用して行うことが可能です。第6頸髄節残存では、肩と肘の屈曲を活用して移乗ができるため、練習すれば自立が可能です。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

脊髄損傷患者のリハビリでは、残存機能を活用した動作の習得が重要です。第6頸髄節残存では、肩や肘の力を最大限に利用しつつ、補助具(スライディングボードなど)を活用することで自立を支援します。しかし、床面からの移乗は体幹支持が必要なため、特に高位損傷では難易度が高くなります。