第59回

第59回理学療法士国家試験 午後問題4

51 歳 の 女 性。突 然 の 意 識 障 害 で 急 性 期 病 院 に 搬 入 さ れ た。意 識 レ ベ ル はJCSⅢ-200。血圧 182/102 mmHg。心拍数 72/分。項部硬直は陽性。発症時の頭部
CT(別冊No. 1)を別に示す。

Screenshot

この患者で疑う疾患はどれか。

  1. 髄膜炎
  2. 脳腫瘍
  3. 脳膿瘍
  4. くも膜下出血
  5. 急性硬膜下血腫

解答解説

正解は 4. くも膜下出血 です。

解説

画像所見や臨床症状から、**くも膜下出血(SAH: Subarachnoid Hemorrhage)**が最も疑われます。この疾患は、主に動脈瘤破裂による出血が原因であり、突然の意識障害や激しい頭痛、項部硬直が特徴的です。

画像所見

頭部CT画像では、脳底部のくも膜下腔に高吸収域(白く見える部分)が認められます。これは、くも膜下腔への出血を示しています。この所見は、くも膜下出血の典型的な画像所見です。

臨床症状

  • 突然の意識障害:動脈瘤破裂により急激な脳内圧上昇が起こるため。
  • 血圧の上昇(182/102 mmHg):高血圧が出血の誘因や結果となります。
  • 項部硬直:くも膜下腔に血液が漏れ出ることで髄膜刺激症状が現れます。

各選択肢の解説

  1. 髄膜炎
    髄膜炎では発熱や髄膜刺激症状(項部硬直)が見られることがありますが、急激な意識障害は稀です。また、頭部CTでは脳底部の血液像は認められず、髄液検査が診断に必要です。この選択肢は誤りです。
  2. 脳腫瘍
    脳腫瘍では徐々に進行する症状(頭痛、吐き気、神経症状)が特徴的であり、突然の意識障害は一般的ではありません。CT画像でも脳底部に出血は見られません。この選択肢は誤りです。
  3. 脳膿瘍
    脳膿瘍は感染性疾患であり、発熱や慢性的な頭痛が主症状です。CTでは膿瘍を囲むリング状増強効果が特徴ですが、今回の画像とは一致しません。この選択肢は誤りです。
  4. くも膜下出血(正解)
    脳底部に出血(高吸収域)が確認されるCT所見、突然の意識障害、髄膜刺激症状(項部硬直)などから、くも膜下出血が疑われます。この選択肢が正解です。
  5. 急性硬膜下血腫
    急性硬膜下血腫は、外傷が主な原因です。CTでは脳表面に三日月状の血腫が見られるのが典型であり、今回の画像所見とは一致しません。この選択肢は誤りです。

ワンポイントアドバイス

くも膜下出血の診断ポイント

  1. 臨床症状:突然の激しい頭痛、意識障害、髄膜刺激症状(項部硬直)。
  2. 画像所見:頭部CTで脳底部やくも膜下腔に高吸収域を確認。
  3. 確定診断:CTで所見が不明確な場合、腰椎穿刺で髄液中の血液を確認。

くも膜下出血は緊急疾患であるため、迅速な診断と治療が必要です。動脈瘤の存在が疑われる場合、脳血管造影(CTAやDSA)が行われます。