2 歳 3 か月の女児。出生時に頭蓋内出血を合併し脳性麻痺と診断された。現在、四肢の筋緊張は低下し、姿勢や動きの中で両下肢の筋緊張が亢進する。両上肢にアテトーゼ様の動きがあり ADL は全介助である。両上肢で支持して座位が 1 分程度は可能である。発達歴は、頸定:10 か月、寝返り: 1 歳 2 か月、ずり這い: 1 歳5 か月。
現時点で最も必要な補装具はどれか。
1. 歩行器
2. 靴型装具
3. 電動車椅子
4. 座位保持装置
5. 普通型車椅子
解答解説
正解は 4.座位保持装置 です。
この症例の女児は、脳性麻痺により全体的な筋緊張が低下し、特に両下肢の筋緊張亢進や両上肢のアテトーゼ様の動きが見られます。ADLは全介助で、座位保持も短時間(約1分間)しかできません。このような状況では、自力で安定して座ることが難しいため、姿勢の安定と身体の支持を確保するために「座位保持装置」が最も適切です。座位保持装置を使用することで、安定した姿勢を維持しやすくなり、周囲との交流や活動の幅が広がります。
選択肢の解説
- 歩行器: 歩行器は歩行機能がある程度確保されている場合に使用しますが、この女児は座位保持も不安定で、歩行機能はまだ期待できない状態です。そのため、歩行器は現時点では適していません。
- 靴型装具: 靴型装具は歩行や立位を支援する目的で使用されることが多いですが、この女児はまだ座位保持も不安定な状態です。立位や歩行を行う段階に達していないため、靴型装具は現時点では必要ありません。
- 電動車椅子: 電動車椅子は自分で操作できることが前提となりますが、この女児はADLが全介助であり、自力で車椅子を操作するのは困難です。また、発育段階からしても、まだ電動車椅子の使用には早いと考えられます。
- 座位保持装置: 座位保持装置は、姿勢を安定させるための補助具で、座位が不安定な脳性麻痺児に適しています。この装置を使うことで、安全に座位姿勢を保つことができ、上半身や手の動きを活用した活動にも取り組みやすくなります。よって、現時点で最も必要な補装具です。
- 普通型車椅子: 普通型車椅子は自力で座位を安定して保持できることが前提となります。この女児は座位保持が1分程度しかできないため、普通型車椅子では安定を保つことが難しく、姿勢の崩れが懸念されます。現時点では適していません。
ワンポイントアドバイス
脳性麻痺児の補装具選定では、発達段階に応じたサポートが重要です。座位保持が難しい場合は座位保持装置を用いて姿勢を安定させ、生活やリハビリ活動への取り組みを支援します。適切な装具を使用することで、身体的な安定を確保し、コミュニケーションや遊びの幅を広げることが期待されます。