第59回

第59回理学療法士国家試験 午前問題15

60 歳の男性。内側型の変形性膝関節症に対して手術療法が行われた。術後のエックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。

骨癒合を促進させるために最も優先度が高い治療法はどれか。

1. 温熱療法
2. 牽引療法
3. 超音波療法
4. 電気刺激療法
5. 電磁波療法

解答解説

正解は 3.超音波療法 です。

このエックス線写真は、脛骨高位骨切り術(HTO: High Tibial Osteotomy)後の画像です。脛骨高位骨切り術は、内側型変形性膝関節症の治療の一環として行われ、脛骨近位部の骨を切り、関節面を再構築する手術です。この手術の目的は、膝のアライメントを変えて、関節への負担を減らすことにあります。

術後に骨癒合を促進するための治療としては、**低出力パルス超音波療法(LIPUS: Low Intensity Pulsed Ultrasound)**が有効です。超音波療法は骨形成を刺激し、骨癒合を促進する効果が確認されています。特に骨折後や骨切り術後の骨癒合促進において、超音波療法が広く用いられています。

選択肢の解説

  1. 温熱療法: 温熱療法は血流を改善し、筋緊張を緩和する効果があるため、関節周囲の痛みや炎症の緩和に役立つことはあります。しかし、骨癒合を促進する直接的な効果は期待できないため、この場合は適していません。
  2. 牽引療法: 牽引療法は関節のスペースを一時的に広げるため、関節症状の一時的な緩和に用いることがありますが、骨癒合を促進する効果はありません。したがって、この場合は適切ではありません。
  3. 超音波療法: 超音波療法(特に低出力パルス超音波療法)は、骨癒合を促進する作用があり、骨折や骨切り術後の治癒促進に効果が期待できます。骨細胞の活動を活性化し、骨の修復過程を早めることができるため、骨癒合を促進する目的には最も優先度が高いです。
  4. 電気刺激療法: 電気刺激療法も骨癒合促進に一定の効果がありますが、超音波療法ほど骨癒合促進効果は強くありません。また、電気刺激療法は特定の機器や手技が必要であり、超音波療法ほど広く使用されていません。
  5. 電磁波療法: 電磁波療法は、骨や軟部組織の治癒を促進する目的で用いられることもありますが、超音波療法と比較すると効果は限定的です。骨癒合促進には適していますが、超音波療法が第一選択です。

ワンポイントアドバイス

脛骨高位骨切り術後の骨癒合促進には、低出力パルス超音波療法(LIPUS)が特に有効です。LIPUSは、非侵襲的に骨形成を促進するため、骨折や骨切り術後のリハビリテーションにおいて頻繁に使用されます。骨の治癒を促進する手段として超音波療法が最も優先されるため、臨床現場での適用に備えて、効果や適応を理解しておくことが重要です。