第57回

第57回理学療法士国家試験 午前問題14

13歳の男子。6歳から野球を始め、中学生から投手となった。投球動作中に右肘に痛みを感じるようになり、病院を受診した。理学療法評価時、肘関節の外反ストレステストを実施したところ、肘関節の内側に痛みが誘発された。痛みが出現する動作はどれか。

解答解説

正解は4. ④です。

肘関節の内側に痛みが誘発される原因としては、肘内側側副靱帯(UCL)の損傷が考えられます。この損傷は、特に投球動作のアクセラレーション期において、肘関節が外反ストレスを受ける際に発生しやすいです。選択肢④は、アクセラレーション期を示しており、この動作中に肘内側にかかる負担が最大となるため、痛みが出現しやすい動作といえます。

各選択肢の解説


  1. これは投球動作の「ワインドアップ期」を示しています。この時期は全身のバランスを取るための準備段階であり、肘関節に大きなストレスがかかることはありません。

  2. これは「コッキング期(初期)」を示しています。この段階では肩甲骨が後方に動き始め、肩や肘への負荷は増加し始めますが、まだ外反ストレスが最大化する段階ではありません。

  3. これは「コッキング期(後期)」を示しています。この時期には肩関節が外旋し、肘に負荷がかかり始めますが、肘の内側へのストレスはアクセラレーション期ほどではありません。
  4. (正解)
    これは「アクセラレーション期」を示しています。投球動作の中で最も肘の外反ストレスが強くかかる段階であり、肘内側側副靱帯に負担が集中するため、痛みが出現しやすいです。この時期が、肘の内側痛を訴える患者における主な問題となる動作です。

  5. これは「フォロースルー期」を示しています。この段階では、ボールがリリースされた後に体の動きを減速させる時期であり、肘関節への外反ストレスは減少します。このため、肘内側痛が主に起きる動作としては該当しません。

ワンポイントアドバイス

投球動作中の肘内側痛は、特に成長期の選手で注意が必要です。反復的な外反ストレスにより、内側側副靱帯や成長軟骨に負担がかかり、「リトルリーグ肘」と呼ばれる障害につながることがあります。早期の適切な評価と治療、そして投球フォームの改善が重要です。