78歳の男性。脳梗塞。左顔面神経麻痺および右片麻痺を呈する。頭部MRIの拡散強調像(別冊No.2)を別に示す。梗塞巣として考えられるのはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
- ⑤
解答解説
正解は4. ④です。
本症例は左顔面神経麻痺と右片麻痺を呈しており、これらの症状は交代性麻痺と呼ばれるもので、脳幹の病変を示唆します。MRI画像の拡散強調像では、④(中部脳幹小脳レベル)において左側の脳幹部に高信号が認められ、これは脳幹の左側病変を反映しています。この部位の病変は、橋の腹側部に存在する錐体路が障害されることで右片麻痺を、また顔面神経核やその線維が障害されることで左顔面神経麻痺を引き起こします。
各選択肢の解説
- ① 放線冠レベル
放線冠の病変は主に片麻痺や感覚障害を引き起こしますが、顔面神経麻痺や交代性麻痺を説明することはできません。このため、該当しません。 - ② 大脳基底核レベル
大脳基底核の梗塞では錐体路が障害され片麻痺を生じる可能性がありますが、顔面神経麻痺を引き起こす脳幹病変を説明することはできません。このため、該当しません。 - ③ 上部脳幹小脳レベル
上部脳幹小脳レベルの病変は小脳失調や構音障害を引き起こすことがありますが、交代性麻痺を特徴とする脳幹の病変には一致しません。 - ④ 中部脳幹小脳レベル(正解)
中部脳幹小脳レベルでは脳幹の橋部分の病変が見られます。橋腹側の梗塞により錐体路が障害され右片麻痺を、顔面神経核やその線維が障害され左顔面神経麻痺を生じます。このため、交代性麻痺を説明する病変として最も適切です。 - ⑤ 下部脳幹小脳レベル
下部脳幹小脳レベルでは延髄の病変が考えられますが、この部位の病変では球麻痺や呼吸障害が特徴的で、交代性麻痺の説明には適しません。
ワンポイントアドバイス
交代性麻痺は脳幹病変の典型的な特徴であり、脳幹の病変が病側の脳神経障害と対側の錐体路障害を引き起こします。脳幹の部位ごとに影響を受ける神経が異なるため、神経症状と画像所見を照らし合わせることが重要です。