第56回

第56回理学療法士国家試験 午前問題14

75歳の女性。左膝痛を訴え、関節可動域が伸展-10°、屈曲95°に制限されている。来院時のエックス線写真(別冊No.3)を別に示す。膝関節拘縮に対する治療で正しいのはどれか。

  1. CPMを行う。
  2. 大腿を固定して伸張を加える。
  3. 痛みを感じるレベルの矯正力を加える。
  4. 動的膝装具は用いない。
  5. 連続ギプス法では日ごとに5°ずつ矯正位を強める。

解答解説

正解は2.大腿を固定して伸張を加える。

膝関節拘縮に対する治療では、関節周囲組織(関節包、筋、靭帯など)の柔軟性を高めるための適切な伸張が重要です。この際、大腿を固定し、膝関節に的確に矯正力を加えることで、安全かつ効果的に拘縮を改善することが可能です。痛みが強くならない範囲で慎重に行う必要があります。

選択肢の解説

  1. CPMを行う。
    CPM(Continuous Passive Motion)は、手術後や急性期に関節の可動性を維持・改善するために使用されます。しかし、慢性の関節拘縮に対しては効果が限定的であり、この状況では第一選択にはなりません。
  2. 大腿を固定して伸張を加える。
    正しいです。 拘縮改善の基本は、適切な固定と伸張を組み合わせることです。大腿を固定することで、膝関節に対して効率的かつ安全に伸張を加えることができます。この方法は慢性の拘縮に対して有効です。
  3. 痛みを感じるレベルの矯正力を加える。
    痛みを感じるレベルの強い矯正力を加えると、患者の不快感を招くだけでなく、周囲組織に損傷を与えるリスクがあります。関節可動域の改善は、痛みを最小限に抑えながら段階的に行うべきです。この選択肢は誤りです。
  4. 動的膝装具は用いない。
    動的膝装具は拘縮の改善に有効であり、特に持続的な低負荷をかけることで徐々に可動域を改善するのに適しています。よって、この選択肢の記載は不適切です。
  5. 連続ギプス法では日ごとに5°ずつ矯正位を強める。
    連続ギプス法は拘縮改善の一手法ですが、通常は数日ごとに矯正を行います。日ごとに5°ずつ矯正を強めるという記述は不正確です。また、連続ギプス法は現在では動的装具などに置き換えられることが多いです。

ワンポイントアドバイス

膝関節拘縮の改善には、適切な固定と徐々に増やす伸張が重要です。 痛みを伴わない範囲で、持続的な伸張力を加えることで関節の可動性を改善します。また、動的装具や低負荷の運動療法を組み合わせることで、より効果的に治療を進められます。