歩行パターンを図に示す。筋力低下を生じている筋はどれか。
- 下腿三頭筋
- 前脛骨筋
- 大殿筋
- 中殿筋
- 長内転筋
解答解説
正解は3.大殿筋です。
図に示されている歩行パターンは、大殿筋歩行(グルートマスク歩行)を示しています。大殿筋の筋力低下により、立脚期に股関節伸展が困難となり、重心を後方に移動させる補償動作が現れます。これにより、立脚期に体幹を後方にそらす特徴的な歩行となります。
選択肢の解説
- 下腿三頭筋
下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)の筋力低下では、足関節の底屈が不十分となり、立脚後期の蹴り出しが弱くなります。しかし、図に示されるような体幹の後方移動を伴う歩行異常は生じません。そのため、この選択肢は不適切です。 - 前脛骨筋
前脛骨筋の筋力低下では、足関節の背屈が困難となり、遊脚期に足先が床に引っかかりやすくなるため「鶏歩(ステッピング歩行)」が生じます。しかし、図には体幹の後方移動が強調されており、前脛骨筋の異常を示しているわけではありません。そのため、不適切です。 - 大殿筋
正しいです。 大殿筋の筋力低下では、立脚期に股関節伸展が十分に行えないため、体幹を後方にそらす補償動作が生じます。これを「大殿筋歩行」と呼び、図の歩行パターンがこれに該当します。 - 中殿筋
中殿筋の筋力低下では「トレンデレンブルグ歩行」が生じます。この場合、立脚期に骨盤が健側に過度に傾き、補償として体幹を患側に倒す動作が特徴です。しかし、図では骨盤の傾斜ではなく体幹の後方移動が見られるため、中殿筋の筋力低下とは無関係です。 - 長内転筋
長内転筋の筋力低下による歩行異常は特に目立った特徴を示すことが少なく、図に示される体幹の後方移動を伴う歩行とは関連しません。そのため、不適切です。
ワンポイントアドバイス
大殿筋歩行(グルートマスク歩行)は、大殿筋の筋力低下による典型的な歩行パターンです。
臨床では、患者の歩行観察において、体幹の後方移動が見られる場合、大殿筋の筋力を重点的に評価する必要があります。中殿筋歩行(トレンデレンブルグ歩行)や前脛骨筋の異常による鶏歩との違いを明確に理解しておくことが重要です。