第56回

第56回理学療法士国家試験 午前問題44

筋萎縮性側索硬化症の進行により非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法を適応すべき数値はどれか。

  1. PaO2:80mmHg
  2. PaCO2:60mmHg
  3. 睡眠中SpO2:94%
  4. 最大吸気圧:75cmH2O
  5. %努力性肺活量(%FVC):85%

解答解説

正解は2(PaCO2:60mmHg)です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、呼吸筋の筋力低下が進行すると肺胞低換気が生じます。その結果、二酸化炭素の排出が不十分となり、PaCO2が増加します。NPPV療法は、PaCO2が45~50mmHgを超える場合や夜間に著しい低酸素血症や高炭酸ガス血症を示す場合に適応となります。特にPaCO2が60mmHg以上になると、呼吸不全が進行していることを示し、NPPVの導入が強く推奨されます。

各選択肢の解説

  1. PaO2:80mmHg
     誤りです。PaO2が80mmHgは正常範囲内(通常75~100mmHg)であり、NPPV適応には該当しません。
  2. PaCO2:60mmHg
     正しい選択肢です。PaCO2の上昇(高炭酸ガス血症)は呼吸不全の重要な指標であり、NPPV導入の判断基準となります。
  3. 睡眠中SpO2:94%
     誤りです。睡眠中SpO2が94%は、ALS患者における酸素化としては比較的良好な値であり、NPPV適応の基準にはなりません。
  4. 最大吸気圧:75cmH2O
     誤りです。最大吸気圧(MIP)の低下もALS患者の呼吸筋機能低下を評価する重要な指標ですが、NPPV適応基準はMIPが-60cmH2O以下の場合です。この選択肢の値は正常範囲内です。
  5. %努力性肺活量(%FVC):85%
     誤りです。%FVCが85%は正常範囲であり、NPPV適応の基準にはなりません。通常、%FVCが50%以下でNPPV適応が検討されます。

ワンポイントアドバイス

ALS患者の呼吸管理では、PaCO2、夜間SpO2、MIP、%FVCが重要な指標となります。NPPVは患者の呼吸努力を補助し、二酸化炭素排出を改善するために用いられます。適応基準となる数値を明確に理解しておくことが重要です。