第56回

第56回理学療法士国家試験 午前問題7

78歳の女性。自宅玄関で転倒してから起立歩行不能となり救急搬送された。来院時の単純エックス線画像(別冊No.2)を別に示す。最も考えられるのはどれか。

  1. 股関節脱臼
  2. 大腿骨頸部骨折
  3. 大腿骨骨頭骨折
  4. 大腿骨転子下骨折
  5. 大腿骨転子部骨折

解答解説

正解は5.大腿骨転子部骨折です。

エックス線画像では、大腿骨近位部の転子部に明らかな骨折線が確認できます。転子部骨折は高齢者に多い骨折であり、特に転倒による外力が直接的な原因となります。この骨折では起立や歩行が不可能となることが多く、救急搬送されるケースが典型的です。

選択肢の解説

  1. 股関節脱臼
    股関節脱臼では、大腿骨頭が寛骨臼から逸脱する状態が確認されますが、このエックス線画像ではそのような所見は見られません。骨折が明らかであり、脱臼の診断は不適切です。
  2. 大腿骨頸部骨折
    大腿骨頸部骨折は、骨頭近くの頸部に骨折線が生じるものです。画像では骨折線が転子部にあり、頸部骨折とは異なる所見を示しています。そのため、この選択肢は不正解です。
  3. 大腿骨骨頭骨折
    大腿骨骨頭骨折は、股関節の骨頭部分に骨折が生じる状態ですが、今回の画像では骨頭部に明らかな骨折所見は認められません。骨折の部位は転子部に限局しているため、この選択肢は誤りです。
  4. 大腿骨転子下骨折
    大腿骨転子下骨折は転子部の下に位置する部分(転子下領域)に骨折が生じる状態ですが、今回の画像では転子部そのものに骨折線が確認され、転子下領域には及んでいません。そのため、この選択肢は不適切です。
  5. 大腿骨転子部骨折
    正しいです。 エックス線画像では転子部に明らかな骨折線が見られ、この部位の骨折として最も適切な診断です。転倒による高齢者の典型的な骨折であり、術後の早期リハビリテーションが重要です。

ワンポイントアドバイス

大腿骨転子部骨折は、高齢者の転倒による典型的な骨折です。 画像診断では、骨折部位の特定が重要であり、転子部、頸部、転子下部の区別を正確に行いましょう。この骨折では骨折固定術(髄内釘やプレート)後のリハビリテーション介入が治療の中心となります。