第51回

第51回理学療法士国家試験 午後問題77

重症熱傷について誤っているのはどれか。

  1. イレウスを起こしやすい。
  2. 胃十二指腸潰瘍を起こしやすい。
  3. 気道熱傷時は窒息の危険が高い。
  4. 熱傷深度が深いほど疼痛が強い。
  5. 受傷直後は循環血液量が減少する。

解答解説

正解は4.熱傷深度が深いほど疼痛が強いです。

熱傷の痛みは、表層の神経終末が損傷される程度により異なります。深い熱傷では神経終末が壊死しているため、逆に痛みを感じにくいことがあります。一方、浅い熱傷では神経が残存しているため、強い痛みを伴うことが多いです。

各選択肢の解説

  1. イレウスを起こしやすい。
    正解。重症熱傷では炎症性サイトカインの影響やストレス反応により腸管麻痺が起こりやすく、イレウスが発生することがあります。
  2. 胃十二指腸潰瘍を起こしやすい。
    正解。重症熱傷では、ストレスによる胃酸分泌の増加や粘膜防御機構の低下が原因で、胃十二指腸潰瘍(Curling潰瘍)が起こることがあります。
  3. 気道熱傷時は窒息の危険が高い。
    正解。気道熱傷では気道粘膜の損傷により浮腫や分泌物が増加し、窒息の危険性が高まります。早期の気道管理が重要です。
  4. 熱傷深度が深いほど疼痛が強い。
    誤り。浅い熱傷(表皮や浅い真皮損傷)では痛覚神経が残存しているため痛みが強く、深い熱傷(真皮全層や皮下組織までの損傷)では痛覚神経が壊死して痛みを感じにくいです。
  5. 受傷直後は循環血液量が減少する。
    正解。重症熱傷では、皮膚のバリア破壊による体液喪失と炎症反応による血管透過性亢進が起こり、循環血液量が急激に減少する「熱傷ショック」を引き起こします。

ワンポイントアドバイス

重症熱傷の重要な特徴

  • 熱傷深度:浅いほど痛みが強い、深いほど壊死が進行して痛みを感じにくい。
  • 全身反応:ショック、イレウス、ストレス潰瘍、感染症など多臓器への影響。
  • 気道管理:気道熱傷では早期の挿管や酸素投与が必要。

深度と全身反応の違いを理解し、症状に合わせた対応を考えることが重要です。