第52回

第52回理学療法士国家試験 午後問題98

境界性パーソナリティ障害にみられないのはどれか。

  1. 不安定な感情
  2. 孤立への欲求
  3. 持続的な空虚感
  4. 不明瞭な自己像
  5. 繰り返す自傷行為

解答解説

正解は2. 孤立への欲求です。

境界性パーソナリティ障害(BPD: Borderline Personality Disorder)は、人間関係や自己像、感情の不安定さ、衝動性などが特徴の精神疾患です。孤立を望むよりも、むしろ孤立への恐怖や人間関係の喪失への不安が強くみられます。そのため、過剰な努力で他者にしがみついたり、見捨てられることへの強い恐れが行動に影響します。「孤立への欲求」はむしろ回避性パーソナリティ障害などでみられる傾向です。

各選択肢の解説

  1. 不安定な感情
    境界性パーソナリティ障害の中心的な特徴で、感情が激しく変動します。不安や怒り、抑うつが交互に現れることが一般的です。この選択肢は正しいです。
  2. 孤立への欲求(正解)
    境界性パーソナリティ障害では孤立を望むことは少なく、むしろ見捨てられることへの強い恐怖が特徴です。この選択肢は誤りです。
  3. 持続的な空虚感
    持続的な空虚感や満たされない感情が頻繁に見られます。これが衝動的な行動や感情の不安定さに結びつくこともあります。この選択肢は正しいです。
  4. 不明瞭な自己像
    自己像が不安定で、アイデンティティの混乱が典型的です。自分が何者であるか、何を望むかが明確でないため、感情や行動が不安定になります。この選択肢は正しいです。
  5. 繰り返す自傷行為
    自傷行為や自殺企図は境界性パーソナリティ障害でよくみられる特徴です。衝動的な行動や感情的な痛みに対する対処行動として現れます。この選択肢は正しいです。

ワンポイントアドバイス

境界性パーソナリティ障害の特徴を押さえましょう:

  • 主要な症状: 感情の不安定さ、見捨てられることへの恐怖、不安定な対人関係、不明瞭な自己像、衝動的行動、自傷行為。
  • 背景: 幼少期のトラウマや愛着障害が影響することが多い。
  • 治療: 弁証法的行動療法(DBT)や認知行動療法(CBT)が有効とされています。

境界性パーソナリティ障害の症状は他の精神疾患と混同しやすいですが、「見捨てられる恐怖」や「衝動的な自傷行為」などの特徴で区別を意識しましょう。