第52回

第52回理学療法士国家試験 午後問題18

53歳の女性。脳出血による右片麻痺で、発症後6週経過。Brunnstrom法ステージは上肢、手指、下肢ともにⅣ。両足をそろえた位置から理学療法士を両上肢で押しながら図のように左足を一歩前に出す運動を行っている。この目的として誤っているのはどれか。

  1. 歩幅の拡大
  2. 歩隔の拡大
  3. 右側の殿筋強化
  4. 右側の下腿三頭筋の強化
  5. 右側の上肢肩甲帯の安定化

解答解説

正解は2. 歩隔の拡大です。

図のような運動では、左右の足を交互に前方へ踏み出すことで、歩幅(前後方向の足の間隔)を広げる練習や、下肢筋力・バランス能力の向上を目的としています。一方、歩隔(左右方向の足の間隔)はこの運動の目的には含まれません。歩隔を広げる運動は、横方向への動きや立脚時の安定性に特化したトレーニングで行います。

各選択肢の解説

  1. 歩幅の拡大
    左足を一歩前に出す運動は歩幅(前後方向の足の間隔)を広げる目的に合致します。正しい目的の1つです。
  2. 歩隔の拡大(正解)
    歩隔は左右方向の足の間隔を指します。この運動では足を前後に動かしているため、歩隔を広げる目的には適しません。不適切な選択肢です。
  3. 右側の殿筋強化
    左足を前方に踏み出す際、右側の股関節伸展筋(大殿筋など)が働いて体幹と骨盤を支えるため、右殿筋の強化につながります。適切な目的です。
  4. 右側の下腿三頭筋の強化
    右側の立脚期では下腿三頭筋が働き、足関節の安定性と体重支持を助けます。この運動は右下腿三頭筋の強化にもつながるため、正しい目的です。
  5. 右側の上肢肩甲帯の安定化
    運動中に両上肢で理学療法士を押す動作では、右側の肩甲帯周囲筋群が安定性を発揮する必要があるため、右側の上肢肩甲帯の安定化が期待できます。この目的も適切です。

ワンポイントアドバイス

歩行再建では、歩幅の拡大や立脚側の筋力強化が重要です。特に片麻痺患者では、非麻痺側の安定性に頼りすぎないよう、麻痺側筋力の強化とバランス能力の向上を目指した訓練を行う必要があります。目的に応じた運動を選択しましょう。