75歳の男性。冠動脈バイパス術後。病棟での運動療法中に胸部不快感を生じた。そのときのモニター心電図を別冊No.4aに示す。この患者にみられるのはどれか。
- 心房細動
- 洞性徐脈
- WPW症候群
- 心室性期外収縮
- Ⅱ度房室ブロック
解答解説
正解は1. 心房細動です。
心電図ではP波が消失しており、不規則なRR間隔(脈拍の不整)が認められます。この所見は典型的な心房細動(AF:Atrial Fibrillation)の特徴です。心房細動は冠動脈バイパス術後や高齢者で頻繁に見られる不整脈であり、胸部不快感や動悸を訴えることが多いです。心房の収縮が不規則になることで血栓形成のリスクもあるため、迅速な対応が求められます。
各選択肢の解説
- 心房細動(正解)
P波の消失とRR間隔の不規則性が心房細動の特徴です。この患者の心電図にはこれらの特徴が見られます。心房細動は冠動脈疾患や手術後の合併症としてよく発生し、正解となります。 - 洞性徐脈
洞性徐脈は、正常なP波と規則正しいRR間隔を伴い、心拍数が60回/分未満となる状態を指します。この心電図ではP波が消失しており、洞性徐脈の特徴に該当しません。 - WPW症候群
WPW症候群では、デルタ波(QRS波の立ち上がりが緩やか)が見られますが、この心電図にその所見はありません。また、心拍の不規則性もWPW症候群の特徴ではありません。不適切です。 - 心室性期外収縮
心室性期外収縮では、QRS波の形が幅広く異常で、早期に出現します。この心電図ではそのような特徴的なQRS波は確認できません。 - Ⅱ度房室ブロック
Ⅱ度房室ブロックでは、P波とQRS波の対応が不規則または徐々にPQ間隔が延長し、QRS波が欠落するパターンが見られます。しかし、この心電図にはP波が存在せず、RR間隔が不規則なため該当しません。
ワンポイントアドバイス
心房細動(AF)は高齢者や術後患者で頻発する不整脈です。P波が消失し、RR間隔が不規則であることが診断のポイントです。血栓リスクが高いため、抗凝固療法が重要になります。臨床では心電図の特徴を素早く把握できるようにしておきましょう。