70歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。線分抹消検査では紙面の左下方の線分抹消が行えず、車椅子駆動時には左側を壁にぶつけることがあった。理学療法として適切なのはどれか。
- 右側から聴覚刺激を与える。
- 右後頸部筋へ振動刺激を行う。
- 頭部は正面を向いたまま体幹を右に回旋させる。
- 手がかりを与えながら左側にある視覚標的を右へ移動させる。
- 視野が右へ偏位するプリズム付眼鏡をかけてリーチ動作を行わせる。
解答解説
正解は5. 視野が右へ偏位するプリズム付眼鏡をかけてリーチ動作を行わせるです。
この患者は、半側空間無視が認められます。これは脳梗塞後に特に右半球の損傷で発生しやすく、左側の刺激に注意を払えなくなる状態です。プリズム付眼鏡は視野を一時的に右へ偏らせることで患者に左側の注意を促し、半側空間無視のリハビリテーションに効果的です。リーチ動作などの課題を組み合わせることで、左側への認識を改善させることが期待できます。
各選択肢の解説
- 右側から聴覚刺激を与える
聴覚刺激は空間認知の補助に有用ですが、右側から刺激を与えるとさらに注意が右側に偏る可能性があります。半側空間無視の改善には適していません。 - 右後頸部筋へ振動刺激を行う
後頸部筋への振動刺激は体性感覚に影響を与え、注意を偏らせる可能性があります。しかし、右側への刺激では注意の偏りを助長するため、この方法は不適切です。 - 頭部は正面を向いたまま体幹を右に回旋させる
体幹を右に回旋すると注意がさらに右側に向かい、左側への注意が減少する可能性があります。この方法は半側空間無視の改善には効果的ではありません。 - 手がかりを与えながら左側にある視覚標的を右へ移動させる
目標を右に移動させることで患者が左側に注意を向ける練習にはなりますが、注意改善の効果は限定的です。また、実際の日常生活における左側への注意の改善には直結しにくいです。 - 視野が右へ偏位するプリズム付眼鏡をかけてリーチ動作を行わせる(正解)
プリズム付眼鏡は、視覚入力を一時的に右側に偏位させることで左側の空間に注意を向けさせる効果があります。リーチ動作などの課題と組み合わせることで半側空間無視の改善を図る方法として推奨されます。
ワンポイントアドバイス
半側空間無視は右半球損傷後に多く発生します。プリズム付眼鏡を用いた訓練は、患者が左側の注意に気づきやすくなる効果的な方法です。日常生活に近い動作(例:リーチや食事)を取り入れることで実生活への応用がしやすくなります。