65歳の男性。被殻出血による右片麻痺。発症後2か月。意識レベル、認知機能および左下肢の機能に問題はない。右足関節の位置覚障害がみられる。起居動作は自立し、座位は安定している。現在、平行棒内での歩行練習中である。歩行中、右下肢の振り出しは可能であるが、踵接地がみられず、右下肢立脚中期に膝折れを認める。Brunnstrom法ステージ右下肢Ⅲ、右下腿三頭筋のMAS(modified Ashworth scale)は2である。
歩行に用いる最も適切な装具はどれか。
- 図1
- 図2
- 図3
- 図4
- 図5
解答解説
正解は3. 図3です。
この患者は、右足関節の位置覚障害、膝折れ(立脚中期に膝が過剰に屈曲する状態)、およびMAS 2(痙縮が中程度)の特徴を有しています。これらの症状を考慮すると、足関節を適切に固定し、膝折れを防ぐ機能を持つ装具が必要です。図3の装具は、足関節固定式の短下肢装具(AFO)で、足関節の支持に加え、膝の安定性を確保するのに適しています。
各選択肢の解説
- 図1
図1は足継手がある装具で、背屈や底屈を許容する構造を持っています。膝折れを防ぐには足関節を固定する必要があるため、この装具は不適切です。 - 図2
図2は柔軟なプラスチック製のAFOであり、軽度の足関節支持には適しています。しかし、膝折れを防ぐ機能はないため、現在の患者には適切ではありません。 - 図3(正解)
図3の装具は足関節固定式のAFOで、足関節を安定させるとともに、足関節の底屈を制限することで膝折れを防ぐ機能を持ちます。この患者の歩行問題に対する最適な選択肢です。 - 図4
図4は長下肢装具で、膝や股関節の動きを制限する構造です。現時点で膝や股関節に高度な不安定性は認められないため、この装具は過剰です。 - 図5
図5はカーボン製のスプリング式AFOで、主に軽度の足部障害や背屈補助を目的としています。膝折れを防ぐには足関節の固定が必要であるため、この装具は不適切です。
ワンポイントアドバイス
膝折れの対策には、足関節の底屈を制限することが重要です。足関節固定式のAFOは、膝折れ防止と足関節の安定を同時に達成できるため、片麻痺患者の歩行問題においてよく使用されます。MASの評価を基に装具選択を行うことも重要です。