第52回

第52回理学療法士国家試験 午後問題12

58歳の男性。歩行時のふらつきを訴えて受診した。歩隔はやや広いが左右方向は安定しており、前後方向への振り子様の歩容がみられる。検査結果を表に示す。協調運動改善のための理学療法として適切なのはどれか。

  1. 自転車エルゴメーターによるペダリング運動
  2. rhythmic stabilization
  3. 下肢筋群の持続的伸張
  4. Frenkel体操
  5. Epley法

解答解説

正解は2. rhythmic stabilizationです。

この患者は、小脳性運動失調が示唆される所見(注視方向性眼振、構音障害、鼻指鼻試験での異常)があり、振り子様の歩容も特徴的です。rhythmic stabilizationは、体幹や四肢の安定性を高め、協調性を改善するための技術であり、小脳性運動失調の患者に有効です。この技法は不随意運動や協調性低下に対処する際に適切とされています。

各選択肢の解説

  1. 自転車エルゴメーターによるペダリング運動
    ペダリング運動は下肢筋力や持久力を向上させる目的で使用されますが、小脳性運動失調における協調運動の改善を直接的に目的としたものではありません。不適切です。
  2. rhythmic stabilization(正解)
    体幹や四肢の不安定性を改善するために用いられる理学療法の一種で、小脳性運動失調における協調性改善に有効です。患者に軽い抵抗を加えて姿勢保持を促し、安定性を高めるための訓練が行われます。正答です。
  3. 下肢筋群の持続的伸張
    筋短縮や痙性を緩和する目的で行われる方法であり、協調性改善には直接的な効果がありません。この患者の症状に適していません。
  4. Frenkel体操
    Frenkel体操は、主に感覚性運動失調の改善に用いられる運動療法であり、視覚的フィードバックを活用して動作の正確さを高めます。しかし、小脳性運動失調の改善を目的とする場合には効果が限定的です。
  5. Epley法
    Epley法は良性発作性頭位めまい症(BPPV)の治療法であり、小脳性運動失調には適応されません。不適切です。

ワンポイントアドバイス

小脳性運動失調では、姿勢や動作の協調性を改善するアプローチが重要です。rhythmic stabilizationは、姿勢制御や安定性を高める方法として有効です。小脳性失調を疑う場合、患者の振り子様歩行や検査所見を総合的に評価し、適切な訓練を選択しましょう。