10歳の男児。Duchenne型筋ジストロフィー。独歩不可能で、屋外は車椅子で、室内では四つ這い移動が可能。上肢に拘縮はなく、座位で上肢の使用が可能である。この時期に優先して行うべき評価はどれか。
- 知能検査
- 深部腱反射
- 神経伝導速度
- 呼吸機能検査
- 前腕回内外試験
解答解説
正解は4. 呼吸機能検査です。
Duchenne型筋ジストロフィーでは、進行性の筋力低下が全身に影響し、特に呼吸筋への影響が重症化のリスクに直結します。この患者は独歩が不可能であり、呼吸筋の低下が進行している可能性があります。呼吸機能検査(肺活量や1秒量)を通じて呼吸能力を適切に評価し、必要に応じて早期の呼吸補助を考慮することが優先されます。
各選択肢の解説
- 知能検査
Duchenne型筋ジストロフィーでは、知的障害を伴うことがあるものの、呼吸機能低下や進行性の筋力低下が重篤な合併症として優先されます。本症例では、知能検査は緊急の優先課題ではありません。 - 深部腱反射
Duchenne型筋ジストロフィーでは、進行性筋力低下により腱反射が減弱することがありますが、深部腱反射の評価は疾患の管理において優先度が低いです。本患者の臨床像では、呼吸機能の評価が重要です。 - 神経伝導速度
神経伝導速度の評価は神経疾患に有用ですが、筋原性疾患であるDuchenne型筋ジストロフィーでは必要ありません。この検査は疾患の診断や管理に直接関連しないため、不適切です。 - 呼吸機能検査(正解)
Duchenne型筋ジストロフィーの進行に伴い、呼吸筋が徐々に弱くなります。この患者は四つ這い移動が可能ですが、呼吸筋力低下が進行している可能性があるため、早期に呼吸機能検査を実施して呼吸機能を評価することが必要です。これは疾患管理において重要な検査です。 - 前腕回内外試験
前腕回内外試験は主に末梢神経障害や関節機能の評価に用いますが、Duchenne型筋ジストロフィーの臨床像や管理とは直接関係しません。不適切な選択肢です。
ワンポイントアドバイス
Duchenne型筋ジストロフィーでは、進行性の筋力低下が全身に及び、特に呼吸筋の低下が生命予後に大きく影響します。定期的な呼吸機能検査(肺活量や1秒率)が重要です。また、非侵襲的人工呼吸器の導入時期を見極めるための基礎データ収集も欠かせません。