60歳の男性。右利き。脳梗塞を発症し、回復期リハビリテーション病棟に入院中である。食事時に右手でスプーンの柄を握りこんでしまい、うまくスプーン操作ができず、介助が必要になることが多いが、少しずつ食事動作が円滑にできる場面が増えてきている。頭部MRI(画像参照)も示されている。この食事動作の病態として考えられるのはどれか。
- 観念失行
- 視覚性失認
- 運動維持困難
- 右上肢運動麻痺
- 右上肢深部覚障害
解答解説
正解は1. 観念失行です。
観念失行は、道具を使う方法や一連の動作を適切に行えない状態です。この患者はスプーンを握り込んでしまい、正しく操作できないため、道具使用障害に該当します。この症状は左半球(特に頭頂葉)の損傷でよく見られます。MRI画像でも左半球に病変が確認され、症状と一致します。
各選択肢の解説
- 観念失行(正解)
道具を使う動作や動作の一連の流れに障害がある状態です。本患者はスプーン操作がうまくできないことが観察されており、観念失行の特徴に該当します。左頭頂葉の損傷が原因として多いです。正答です。 - 視覚性失認
視覚情報の認識や理解が困難になる状態です。この患者の場合、スプーンを認識できているものの操作ができないため、視覚性失認とは異なります。 - 運動維持困難
持続的な運動の維持ができない状態を指しますが、今回の患者は特定の動作プランニングに問題があるだけで、持続的運動の困難さは見られません。誤りです。 - 右上肢運動麻痺
右上肢麻痺があれば動作そのものが不可能になりますが、患者はスプーンを握ることは可能です。このことから運動麻痺ではなく、観念失行が問題です。 - 右上肢深部覚障害
深部覚障害では関節や筋肉の位置感覚が損なわれますが、この患者の場合、位置感覚よりもスプーン操作に関する動作プランニング障害が見られます。したがって不適切です。
ワンポイントアドバイス
観念失行は、左半球(特に頭頂葉)の損傷で起こりやすく、道具の使用や一連の動作のプランニングに障害を生じます。リハビリでは、道具の使い方を繰り返し練習し、代償的な手法を取り入れることが重要です。この症状と関連する解剖学的部位を覚えておきましょう。