第51回

第51回理学療法士国家試験 午後問題19

69歳の男性。肺癌。これまで化学療法を行ったが病状は進行し、経過中に脳転移がみられた。胸部エックス線写真(別冊No. 2A)と頭部造影MRI(別冊No. 2B)とを別に示す。現在、呼吸に関する自覚症状はないが、全身倦怠感、食思不振および悪心があり、外出する気分になれず自宅に閉じこもる傾向にある。この時期に適切な理学療法はどれか。

  1. 嚥下練習
  2. 下肢促通運動
  3. 屋外での歩行運動
  4. 軽打法による排痰
  5. 漸増的な持久性運動

解答解説

正解は3.屋外での歩行運動です。

この患者は全身倦怠感や食思不振、悪心などの症状を訴えていますが、呼吸器に自覚症状はありません。自宅に閉じこもる傾向があるため、身体機能の低下や心理的負担が懸念されます。屋外での歩行運動は、適度な身体活動と心理的なリフレッシュを促し、患者の生活の質(QOL)を向上させる効果が期待されます。無理のない範囲で患者の体調に合わせた歩行練習を指導することが重要です。

各選択肢の解説

  1. 嚥下練習
    誤り。嚥下練習は嚥下障害がある場合に行うものですが、この患者には嚥下障害に関する記載がなく、適切ではありません。
  2. 下肢促通運動
    誤り。下肢促通運動は主に筋力強化や運動制御の改善を目的とする訓練です。しかし、患者の主な問題は全身倦怠感や閉じこもり傾向であり、心理的な負担を軽減する効果は限定的です。
  3. 屋外での歩行運動
    正解。屋外での歩行運動は、身体活動を促進し、患者の心理的負担を軽減するのに適しています。適度な運動はQOLの改善に寄与し、心身の健康維持に有効です。
  4. 軽打法による排痰
    誤り。軽打法は痰の貯留がある場合に用いられますが、患者は呼吸に関する自覚症状がなく、排痰の必要性も記載されていないため、適切ではありません。
  5. 漸増的な持久性運動
    誤り。持久性運動は心肺機能の向上を目的としますが、この患者には全身倦怠感があるため、運動負荷を段階的に増やすような運動は適切ではありません。無理のない範囲で行える運動が優先されます。

ワンポイントアドバイス

癌患者のリハビリテーションでは、患者の身体状況や心理的状態を考慮して、無理なく実施できる運動を選択することが重要です。屋外での歩行運動は、身体機能の維持とともに心理的なリフレッシュを図る効果があり、患者の閉じこもり傾向を改善するための効果的なアプローチとなります。