37歳の女性。5年前に多発性硬化症と診断。発症当初は再発寛解型であったが、2年前に二次進行型に移行し右痙性片麻痺がある。2週前から右内反尖足位の痙縮が増悪し、MAS〈modified Ashworth scale〉で段階2である。右足の痙縮に対する治療で適切なのはどれか。
- 赤外線療法
- ホットパック
- 電気刺激療法
- アキレス腱延長術
- 経頭蓋磁気刺激法
解答解説
正解は3.電気刺激療法です。
痙縮に対する治療の基本は、筋の緊張を緩和して関節可動域を確保することです。電気刺激療法(Electrical Stimulation Therapy)は、拮抗筋(この場合は足関節の背屈筋)を刺激することで、相反抑制を利用して痙縮を軽減させる効果があります。非侵襲的かつ安全であり、リハビリテーションの初期治療に適した方法です。
各選択肢の解説
- 赤外線療法
誤り。赤外線療法は表層組織の温熱療法であり、筋緊張の軽減には一時的な効果が期待できますが、痙縮そのものを根本的に改善する効果はありません。 - ホットパック
誤り。ホットパックも温熱療法の一種で、筋緊張を一時的に軽減する効果はありますが、痙縮の治療としては不十分です。積極的な痙縮治療には他の方法が必要です。 - 電気刺激療法
正解。電気刺激療法は、足関節の背屈筋群を刺激することで、拮抗筋の筋活動を促進し、相反抑制により痙縮を緩和します。痙縮治療として広く利用されており、安全かつ効果的です。 - アキレス腱延長術
誤り。アキレス腱延長術は、痙縮が重度で保存的治療が効果を示さない場合の最終手段として行われます。本症例ではまだ段階2の痙縮であり、外科的治療は適切ではありません。 - 経頭蓋磁気刺激法
誤り。経頭蓋磁気刺激法は中枢神経系の興奮性を調整する非侵襲的治療法ですが、痙縮への即時的な効果や実用性には限界があります。日常的に使用される治療法ではありません。
ワンポイントアドバイス
痙縮の治療では、非侵襲的かつ安全な方法(例:電気刺激療法、ストレッチ、装具療法)を優先することが重要です。電気刺激療法は、拮抗筋を刺激して筋緊張を緩和する相反抑制を利用しており、痙縮の軽減に効果的です。患者の状態に応じた段階的な治療計画を立てることが大切です。