患者の鼻(A)から目標(B)に向かって患者の示指を動かしたときの水平面上の軌跡を図に示す。この患者にみられる可能性が高いのはどれか。
- 折りたたみナイフ現象
- Romberg徴候陽性
- はさみ脚歩行
- 断綴性発語
- 筋強剛
解答解説
正解は4.断綴性発語です。
図に示される動作は、小脳障害による企図振戦を表しています。企図振戦は目標に近づくにつれて動きが不規則になり、目標達成が困難になるのが特徴です。このような小脳機能障害では、断綴性発語(音節間が途切れる話し方)も併発しやすいです。
各選択肢の解説
- 折りたたみナイフ現象
誤り。折りたたみナイフ現象は、痙性麻痺の患者にみられる症状で、関節を動かした際に最初は抵抗が強く、その後急に抵抗が弱くなる現象です。小脳障害の症状ではなく、この図に示される軌跡とも関係がありません。 - Romberg徴候陽性
誤り。Romberg徴候陽性は、深部感覚障害により立位保持が困難となる現象で、小脳障害特有の症状ではありません。むしろ小脳障害では、目を開けていてもバランスが崩れるのが特徴です。 - はさみ脚歩行
誤り。はさみ脚歩行は、痙性対麻痺でみられる歩容で、小脳障害とは無関係です。痙縮により下肢の内転筋が過緊張となり、脚が交差するように歩く特徴があります。 - 断綴性発語
正解。断綴性発語は小脳障害の典型的な症状で、発語時にリズムが不規則となり、言葉のつながりが途切れることがあります。小脳の運動調整機能の障害が原因です。 - 筋強剛
誤り。筋強剛はパーキンソン病など錐体外路系疾患でみられる症状で、小脳障害による企図振戦とは関連がありません。
ワンポイントアドバイス
小脳障害では、運動調整ができなくなるため、企図振戦や断綴性発語、運動失調が主要な症状として現れます。企図振戦は目標に近づくと振戦が増強するのが特徴であり、診断の一助となります。また、小脳障害の症状と錐体外路系や感覚系の障害の違いを把握しておくと、選択肢を絞りやすくなります。