第51回

第51回理学療法士国家試験 午後問題8

つまずきやすさを主訴に来院した70歳の患者の頭部MRIのT1強調矢状断像(別冊No.1)を別に示す。この患者で主訴に関連のある症状はどれか。

  1. 運動失調
  2. 感覚障害
  3. 視野障害
  4. 前庭障害
  5. 歩行失行

解答解説

正解は1.運動失調です。
MRI画像では、小脳萎縮が確認されます。小脳は運動の調整やバランス、協調運動に関与しており、小脳萎縮により運動失調が生じます。この患者の「つまずきやすさ」は、歩行時のバランス不良や協調運動障害が原因と考えられ、小脳障害に関連しています。

各選択肢の解説

  1. 運動失調
    正解。小脳萎縮によって生じる主要な症状の1つが運動失調です。歩行時のバランスが不安定となり、つまずきやすくなります。特に歩行時の協調性が低下し、患者は不規則な歩容を示すことがあります。
  2. 感覚障害
    誤り。感覚障害は末梢神経や脊髄の問題で生じることが多く、小脳萎縮による症状ではありません。感覚障害が原因でつまずく可能性は低いです。
  3. 視野障害
    誤り。視野障害は、主に後頭葉や視覚伝導路の障害に起因します。小脳萎縮との関連性は低く、この患者の主訴には関係ありません。
  4. 前庭障害
    誤り。前庭系の障害は平衡感覚の異常を引き起こしますが、MRI画像に示される小脳萎縮では前庭系の直接的な障害は想定されません。
  5. 歩行失行
    誤り。歩行失行は前頭葉や大脳皮質の障害で生じるもので、歩行時に動作を開始することが困難になる症状です。小脳萎縮による症状とは異なります。

ワンポイントアドバイス

小脳は運動の精密な調整や協調性に重要な役割を果たしています。小脳萎縮により生じる運動失調では、歩行時のふらつきやバランス障害が特徴的です。患者の歩容や症状を観察し、小脳障害による協調運動の異常を見逃さないようにしましょう。