79歳の女性。脳卒中後の左片麻痺。プラスチックAFOを装着してT字杖歩行が可能である。装具は足尖までの長さで足継手はない。Brunnstrom法ステージでは上肢Ⅳ、下肢Ⅴ。左立脚後期が歩行周期の中で極端に短く安定性も低下している。歩容を改善するために有用な方法はどれか。
- 外側フレアを付ける。
- 足部のベルクロの固定を緩める。
- 装具の高さを下中央付近まで低くする。
- 装具の中足指節関節部から遠位部を切除する。
- 足関節部の固定性を強化(コリュゲーション)する。
解答解説
正解は4.装具の中足指節関節部から遠位部を切除するです。
AFO(足継手のない装具)が足尖までの長さだと、立脚後期における足関節の背屈が制限され、足底でのローリング運動が妨げられます。この場合、中足指節関節部から遠位部を切除することで足部のローリングが容易になり、歩行時の安定性が向上します。
各選択肢の解説
- 外側フレアを付ける
誤り。外側フレアは、外反変形の矯正や安定性向上のために使用されますが、今回のケースでは立脚後期に関する問題の改善には直接関係がありません。 - 足部のベルクロの固定を緩める
誤り。足部の固定を緩めると、装具内での足部の動揺が増え、安定性が低下する可能性があります。この方法は問題解決には適しません。 - 装具の高さを下中央付近まで低くする
誤り。装具の高さを低くすることは安定性を低下させる要因となります。脳卒中後の片麻痺では足関節や下腿の適切な支持が必要であり、この方法は適切ではありません。 - 装具の中足指節関節部から遠位部を切除する
正解。中足指節関節部から遠位を切除することで足部のローリング運動が容易になります。これにより立脚後期の動きが改善され、歩容と安定性が向上します。脳卒中後片麻痺の患者には特に有用な修正方法です。 - 足関節部の固定性を強化(コリュゲーション)する
誤り。足関節部の固定性を強化すると、立脚後期で必要な背屈動作がさらに制限されるため、歩容の改善には逆効果となります。
ワンポイントアドバイス
脳卒中後片麻痺の歩行では、立脚後期のローリング運動を確保することが重要です。AFOを使用している場合、足尖までの装具が原因でこの動作が制限されることがあります。中足指節関節部から遠位部を切除するなど、装具の形状を工夫することで、歩行の安定性と効率を改善できることを覚えておきましょう。