第59回

第59回理学療法士国家試験 午後問題95

広範囲熱傷の病態と急性期治療で誤っているのはどれか。

  1. 高血糖になる。
  2. 全身浮腫を生じる。
  3. 輸液量を制限する。
  4. 基礎代謝量は増加する。
  5. 高蛋白の栄養療法にする。

解答解説

正解は 3.輸液量を制限する です。

広範囲熱傷では、皮膚バリアの破壊と炎症反応により、体液の喪失や全身性の代謝異常が生じます。急性期の治療では、十分な輸液による循環血液量の確保が最優先されます。以下、各選択肢を詳しく解説します。

各選択肢の解説

  1. 高血糖になる
    広範囲熱傷ではストレス反応が強くなり、カテコールアミンやコルチゾールの分泌が増加します。その結果、糖新生が促進され、高血糖状態が生じることがよくあります。この選択肢は正しいです。
  2. 全身浮腫を生じる
    熱傷では血管透過性が亢進し、血漿成分が血管外に漏出するため、全身性の浮腫が発生します。浮腫は特に広範囲熱傷の初期に顕著で、輸液療法においても注意が必要です。この選択肢は正しいです。
  3. 輸液量を制限する(誤り)
    広範囲熱傷では、大量の体液が血管外に漏出するため、急性期においては十分な輸液(輸液療法)が必要です。輸液量を制限するとショックや腎不全などのリスクが高まります。輸液量は熱傷面積と体重を基に計算され(パークランドの式など)、適切な量を投与します。この選択肢が誤りです。
  4. 基礎代謝量は増加する
    広範囲熱傷では、体が損傷の修復を行うためにエネルギー消費が増加し、基礎代謝量は大幅に増加します。これにより高エネルギーの栄養療法が必要です。この選択肢は正しいです。
  5. 高蛋白の栄養療法にする
    熱傷では損傷した組織の修復や蛋白質の異化亢進に対処するために、高蛋白の栄養療法が必要です。蛋白質を十分に摂取することで創傷治癒を促進し、感染リスクを軽減します。この選択肢は正しいです。

ワンポイントアドバイス

広範囲熱傷では、急性期の輸液療法が最も重要であり、適切な量を迅速に投与することが生命予後を左右します。輸液不足はショックや多臓器不全を引き起こすため注意が必要です。また、代謝亢進に対処するための高エネルギー・高蛋白栄養療法の重要性も押さえておきましょう。