筋萎縮性側索硬化症における典型的な筋電図検査所見で正しいのはどれか。
- 運動神経伝導検査における遠位潜時延長
- 感覚神経伝導検査における伝導ブロック
- 針筋電図検査における線維束攣縮の電位出現
- 反復刺激試験における漸減現象〈Waning〉
- 反復刺激試験における漸増現象〈Waxing〉
解答解説
正解は 3.針筋電図検査における線維束攣縮の電位出現 です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが進行性に障害される疾患で、筋電図検査はその診断において重要です。ALSでは、下位運動ニューロン障害による線維束攣縮や脱神経電位が針筋電図で観察されます。以下、各選択肢について解説します。
各選択肢の解説
- 運動神経伝導検査における遠位潜時延長
ALSでは運動神経の伝導速度は比較的保たれることが多く、遠位潜時の延長は典型的な所見ではありません。一方、遠位潜時延長は、末梢神経障害(例:ギラン・バレー症候群)や末梢神経の脱髄性疾患でみられることがあります。この選択肢は誤りです。 - 感覚神経伝導検査における伝導ブロック
ALSでは感覚神経は通常保たれるため、感覚神経伝導検査で伝導ブロックなどの異常は認められません。伝導ブロックは、ギラン・バレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)などでみられる所見です。この選択肢は誤りです。 - 針筋電図検査における線維束攣縮の電位出現(正解)
ALSでは、下位運動ニューロンの障害により筋繊維が自発的に活動する結果、針筋電図で**線維束攣縮(ファシクリュレーション)**の電位が確認されます。また、脱神経電位(鋭波、線維自発電位)や巨大振幅電位などもALSに特徴的な所見です。この選択肢が正しいです。 - 反復刺激試験における漸減現象〈Waning〉
漸減現象(Waning)は、神経筋接合部障害である重症筋無力症において典型的にみられる所見です。ALSは運動ニューロン疾患であり、神経筋接合部の障害はありません。この選択肢は誤りです。 - 反復刺激試験における漸増現象〈Waxing〉
漸増現象(Waxing)はランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)に典型的にみられる所見です。ALSではみられないため、この選択肢は誤りです。
ワンポイントアドバイス
ALSの筋電図検査所見では、**線維束攣縮電位(ファシクリュレーション)と脱神経電位(鋭波、線維自発電位)**が重要な指標です。また、運動神経伝導検査では速度が比較的保たれる点や、感覚神経が障害されない点を押さえておくとよいでしょう。他疾患(例:重症筋無力症、LEMS、ギラン・バレー症候群)との鑑別ポイントも理解しておくことが試験対策に役立ちます。