第52回

第52回理学療法士国家試験 午前問題16

46歳の男性。前日夜に冷たい風に当たり、翌朝目が覚めると右顔面の腫れぼったさを感じた。昼食時に食事が口からこぼれることに気が付き、近くの神経内科を受診した。開眼安静時の顔面の状態を図に示す。

この患者で正常に保たれる運動はどれか。

  1. 額にしわを寄せる。
  2. 眉をひそめる。
  3. まぶたを閉じる。
  4. 奥歯を嚙む。
  5. 口唇を閉じ突き出す。

解答解説

正解は4.奥歯を嚙むです。

この患者は末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)が疑われます。末梢性顔面神経麻痺では、顔面神経が支配する表情筋の運動が麻痺しますが、咬筋(奥歯を嚙む運動)は三叉神経の支配であるため、機能が正常に保たれます。

各選択肢の解説

  1. 額にしわを寄せる。
    額を動かす運動は顔面神経の支配を受けており、末梢性顔面神経麻痺では麻痺が生じます。そのため、この運動は正常には保たれません。
  2. 眉をひそめる。
    眉を動かす筋肉も顔面神経の支配であり、末梢性顔面神経麻痺では麻痺します。よって、この運動も正常には保たれません。
  3. まぶたを閉じる。
    眼輪筋は顔面神経に支配されており、末梢性顔面神経麻痺では麻痺します。そのため、この運動も正常には保たれません。
  4. 奥歯を嚙む。(正解)
    咬筋は三叉神経(第5脳神経)の支配を受けており、末梢性顔面神経麻痺では影響を受けません。 そのため、この運動は正常に保たれます。これが正解です。
  5. 口唇を閉じ突き出す。
    口唇を動かす筋肉も顔面神経の支配を受けており、末梢性顔面神経麻痺では麻痺します。そのため、この運動も正常には保たれません。

ワンポイントアドバイス

末梢性顔面神経麻痺では、顔面神経の支配範囲すべて(額・目・口)が麻痺しますが、咬筋など三叉神経の支配領域は正常に機能します。これに対し、中枢性顔面神経麻痺では額の運動が保たれることが多い点が鑑別のポイントです。試験では神経支配を正確に覚えましょう。