39歳の男性。野球の試合中にジャンプしてボールをキャッチした着地時に、踵に痛みと違和感を訴えた。その直後から歩行困難となったために、応急処置の後に緊急搬送された。搬送先の病院で撮影された足部MRI(別冊No. 5)を別に示す。矢印は損傷部位を示す。
受傷直後の処置として適切なのはどれか。
- 足底板による固定
- 足関節周辺の保温
- 足関節底屈位での固定
- 強擦法による下肢部のマッサージ
- 端座位による下肢下垂位での安静
解答解説
正解は3.足関節底屈位での固定です。
このケースはアキレス腱断裂が疑われます。MRI画像に示された矢印の部位はアキレス腱の断裂部位に一致しており、歩行困難や踵の痛みという症状も典型的です。受傷直後の適切な処置として、足関節を底屈位(アキレス腱の緊張を緩めた状態)で固定することが重要です。これにより、断裂部の緊張が軽減され、修復過程に適した状態が保持されます。
各選択肢の解説
- 足底板による固定
足底板は足底の支持を目的とした装具ですが、アキレス腱断裂に対しては適切な処置ではありません。断裂部位の保護には足関節を底屈位で固定する方法が必要です。 - 足関節周辺の保温
温熱療法は血流改善を目的とする手法であり、アキレス腱断裂の急性期では適応外です。急性期では炎症や腫脹を抑えることが優先されます。 - 足関節底屈位での固定(正解)
足関節を底屈位で固定することにより、断裂部の緊張を最小限に抑え、治癒を促進する状態を維持できます。これがアキレス腱断裂の急性期における適切な処置です。 - 強擦法による下肢部のマッサージ
マッサージは血流促進のための手技ですが、急性期のアキレス腱断裂には禁忌です。損傷部位にさらに負荷をかけ、症状を悪化させる可能性があります。 - 端座位による下肢下垂位での安静
下肢を下垂位で安静にすると、断裂部の緊張が増加し、状態が悪化する可能性があります。アキレス腱断裂では適切な固定が重要です。
ワンポイントアドバイス
アキレス腱断裂の典型症状は、受傷時の「バチン」という音、腱部の陥凹、歩行困難などです。トンプソンテスト(腓腹筋を圧迫して足関節が底屈するかを確認)も診断に有効です。治療では急性期に適切な固定が重要で、リハビリでも腱に過度の負荷をかけないことがポイントです。