56歳の男性。閉塞性動脈硬化症。半年前から左下肢から足部にかけて冷感と痛みが発現し、歩行距離も低下している。
検査法と結果の組合せで正しいのはどれか。
- 立位体前屈
- 足背動脈の触診
- 足関節上腕血圧比
- 両下肢の下垂試験
- トレッドミル歩行
解答解説
正解は5.トレッドミル歩行間欠性跛行の出現です。
閉塞性動脈硬化症(ASO:Arteriosclerosis Obliterans)は、動脈の狭窄や閉塞による下肢虚血が特徴で、間欠性跛行が主症状です。トレッドミル試験を行うと、一定の歩行で虚血症状が誘発され、間欠性跛行が確認されます。この検査結果は、ASOの典型的な病態を反映しています。
各選択肢の解説
- 立位体前屈痛みの軽減
立位体前屈による痛みの軽減は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に特徴的な所見です。ASOでは血流障害が原因であり、体位変換によって痛みが軽減することはありません。このため該当しません。 - 足背動脈の触診リズムの不整
ASOでは、足背動脈や後脛骨動脈の拍動が減弱または消失することはありますが、リズムの不整は心房細動や心疾患に関連する所見であり、ASOには合致しません。 - 足関節上腕血圧比1.2以上
足関節上腕血圧比(ABI)は、正常では1.0~1.2の範囲に収まります。ASOでは動脈の狭窄・閉塞によりABIが低下(0.9未満)するため、1.2以上はむしろ異常高値であり、ASOには当てはまりません。 - 両下肢の下垂試験感覚異常の出現
下肢の下垂試験では虚血性の皮膚色変化が確認されますが、感覚異常が出現することは一般的ではありません。感覚異常はむしろ糖尿病性ニューロパチーなどが原因である可能性があります。このため該当しません。 - トレッドミル歩行間欠性跛行の出現(正解)
間欠性跛行はASOの代表的な症状であり、トレッドミル試験で確認されます。歩行により筋肉の酸素需要が増大するために痛みが生じ、休息によって改善するのが特徴です。この選択肢が正解です。
ワンポイントアドバイス
閉塞性動脈硬化症の診断では、ABI測定やトレッドミル試験が重要です。ABIの低下(0.9未満)は病態の進行を示し、間欠性跛行の出現が特徴的な症状です。ASOの鑑別には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などとの違いを明確に理解しておくことが重要です。