30歳の男性。スキーで転倒して受傷した。エックス線写真(別冊No.1)を別に示す。肩脱臼整復後に肩関節内転・内旋位で固定されたが、上腕の外側上部に感覚鈍麻を訴えた。合併症の神経麻痺はどれか。
- 腋窩神経
- 肩甲上神経
- 肩甲下神経
- 尺骨神経
- 正中神経
解答解説
正解は1です。
肩関節脱臼の後、腋窩神経(C5~C6)の損傷が最も一般的な合併症です。腋窩神経は肩関節の近くを走行しており、脱臼時に圧迫や牽引で損傷を受けることがあります。この神経が損傷されると、以下の症状が見られます:
- 感覚障害:上腕外側上部(デルタ筋領域)の感覚鈍麻。
- 運動障害:三角筋と小円筋の麻痺による肩の外転・外旋の障害。
各選択肢の解説
- 腋窩神経(正解)
正しい選択肢です。腋窩神経は肩関節前方脱臼で損傷されやすく、上腕外側上部の感覚鈍麻と三角筋麻痺を引き起こします。 - 肩甲上神経
肩甲上神経は棘上筋と棘下筋を支配し、肩の外転・外旋に関与します。この神経が損傷されると、外旋の障害が生じる可能性がありますが、感覚障害は伴いません。この選択肢は誤りです。 - 肩甲下神経
肩甲下神経は肩甲下筋と大円筋を支配しますが、損傷されても感覚障害は見られません。この選択肢は誤りです。 - 尺骨神経
尺骨神経は主に前腕と手の筋・皮膚を支配します。肩関節脱臼とは関連がなく、感覚障害が起こる部位も異なります。この選択肢は誤りです。 - 正中神経
正中神経は前腕の屈筋群や手の母指球筋を支配します。感覚障害は手掌側で生じ、肩脱臼とは関係がありません。この選択肢は誤りです。
ワンポイントアドバイス
- 肩関節前方脱臼は若年成人のスポーツ外傷でよく見られます。腋窩神経の損傷が伴う可能性が高いため、感覚や運動機能を注意深く評価することが重要です。
- デルタ筋領域の感覚検査と肩外転の筋力テストを実施し、腋窩神経麻痺の有無を確認しましょう。