第51回

第51回理学療法士国家試験 午前問題19

24歳の女性。2日前に室内での火災に巻き込まれ救急搬送された。35%の範囲の熱傷と診断され入院中。意識は清明。顔面から前頸部も受傷し煤のような色の痰がでる。肩甲帯から上腕にかけては植皮が必要な状態。骨盤と下肢とに傷害はみられない。この時期の理学療法として適切なのはどれか。

  1. 患部局所の浮腫に対する弾性包帯による持続圧迫
  2. 下肢に対する80%MVCでの筋力増強
  3. 背臥位での持続的な頸部伸展位の保持
  4. 尖足予防のための夜間装具の装着
  5. squeezingによる排痰

解答解説

正解は5.squeezingによる排痰です。

顔面や前頸部の熱傷、煤のような痰が確認されていることから、気道内の熱傷や吸入性障害が疑われます。この場合、肺への分泌物の貯留や感染を防ぐため、squeezing(胸部圧迫法)による排痰が重要です。排痰を促進することで呼吸機能を維持し、肺炎などの合併症予防につながります。

選択肢の解説

  1. 患部局所の浮腫に対する弾性包帯による持続圧迫
    弾性包帯による圧迫療法は熱傷瘢痕の予防や浮腫の管理に有効ですが、創傷が治癒してから適用されます。この時期は植皮が必要な状態であり、圧迫療法は適切ではありません。この選択肢は誤りです。
  2. 下肢に対する80%MVCでの筋力増強
    最大随意収縮(MVC)の80%の負荷を伴う筋力増強運動は、熱傷急性期の患者に対しては負担が大きく、不適切です。この選択肢は誤りです。
  3. 背臥位での持続的な頸部伸展位の保持
    顔面から前頸部の熱傷があるため、頸部を伸展位に固定することで瘢痕拘縮を予防する必要があります。ただし、「持続的な保持」は動きが制限され、他の問題(呼吸困難など)を引き起こす可能性があるため適切ではありません。この選択肢は誤りです。
  4. 尖足予防のための夜間装具の装着
    尖足の予防は下肢の長期固定などで必要になりますが、本症例では下肢に損傷がなく、尖足予防は現時点での優先事項ではありません。この選択肢は誤りです。
  5. squeezingによる排痰
    吸入性障害が疑われる場合、肺への分泌物の貯留を防ぐために排痰が重要です。squeezingによる排痰は胸郭を圧迫し、呼気を促進することで痰の排出を助けます。本症例の状況に適しており、この選択肢が正解です。

ワンポイントアドバイス

熱傷患者では、損傷部位や合併症に応じた適切なリハビリテーションを選択することが重要です。特に吸入性障害がある場合は、排痰や呼吸機能の維持が最優先されます。また、熱傷後の瘢痕拘縮予防のためには早期の適切なポジショニングや運動療法も計画的に実施しましょう。