80歳の男性。胸部CT(別冊No. 5)を別に示す。この患者で予想されるのはどれか。
- 肥満
- 残気量の低下
- 一秒率の低下
- 気道抵抗の低下
- 肺コンプライアンスの低下
解答解説
正解は3.一秒率の低下です。
胸部CT画像では、肺の過膨張と肺胞壁の破壊による肺野の透過性亢進が認められ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特に肺気腫が示唆されます。COPDでは閉塞性障害が見られ、特に一秒率(FEV1/FVC)が低下することが特徴的です。これは気流閉塞により、努力呼気で一秒間に吐き出せる空気量が減少するためです。
選択肢の解説
- 肥満
COPDの患者では、気流制限による活動量の低下から痩せ型になることが多く、肥満とは関連が低いです。この選択肢は誤りです。 - 残気量の低下
肺気腫では、肺胞の過膨張により残気量(RV)はむしろ増加します。残気量の低下は間質性肺疾患などの拘束性障害でみられる所見であり、この選択肢は誤りです。 - 一秒率の低下
一秒率は、努力肺活量(FVC)に対する一秒量(FEV1)の割合を示す指標で、閉塞性障害では低下します。肺気腫を含むCOPDの典型的な所見であり、この選択肢が正解です。 - 気道抵抗の低下
COPDでは気流閉塞の結果、気道抵抗は増加します。気道抵抗が低下するのは、気道が広がる正常な肺の状態や一部の治療後の反応です。この選択肢は誤りです。 - 肺コンプライアンスの低下
肺コンプライアンス(肺の伸展性)は肺気腫ではむしろ増加します。これは、肺胞壁が破壊されて弾性収縮力が低下するためです。肺コンプライアンスが低下するのは拘束性障害でみられます。この選択肢は誤りです。
ワンポイントアドバイス
COPDでは、「一秒率の低下」「残気量の増加」「肺コンプライアンスの増加」が重要なポイントです。特に、一秒率は閉塞性障害を判断するための指標であり、正常値は70%以上です。試験ではCT画像や呼吸機能検査結果をもとにCOPDの特徴を正確に理解し、診断に結びつける練習を行いましょう。