45歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。発症から1年経過している。ADLは自立しているが、主に下肢の筋力低下、バランス不良および鶏歩が認められる。理学療法で適切なのはどれか。
- 車椅子操作の練習
- 下肢の漸増抵抗運動
- 両松葉杖での歩行練習
- 感覚再教育によるバランス練習
- プラスチックAFOを装着した歩行練習
解答解説
正解は5.プラスチックAFOを装着した歩行練習です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、運動ニューロンの進行性の障害により筋力低下が進行します。今回の症例では鶏歩が認められ、足関節背屈の筋力低下が疑われます。プラスチックAFO(足関節装具)は足関節背屈を補助し、歩行パターンを改善するため適切です。装具を用いることで、エネルギー消費の軽減やバランスの改善が期待されます。
選択肢の解説
- 車椅子操作の練習
現在の症例ではADLが自立しており、歩行可能な状態です。車椅子操作の練習は時期尚早であり、患者の歩行能力を保持することを優先すべきです。この選択肢は誤りです。 - 下肢の漸増抵抗運動
ALSでは過剰な抵抗運動は筋疲労を誘発し、進行を加速させる可能性があります。漸増抵抗運動は筋力向上を目的とするものであり、この疾患には適していません。この選択肢は誤りです。 - 両松葉杖での歩行練習
現時点でADLが自立している患者に、両松葉杖を使用する歩行練習は不適切です。患者の独立性を損なう可能性があり、軽度の支援が適しています。この選択肢は誤りです。 - 感覚再教育によるバランス練習
ALSは感覚神経が主に障害される疾患ではありません。バランス不良は筋力低下によるものが多く、感覚再教育では効果が期待できません。この選択肢は誤りです。 - プラスチックAFOを装着した歩行練習
プラスチックAFOは足関節背屈を補助し、鶏歩の改善や歩行の安定性向上に効果的です。エネルギー消費を軽減しつつ歩行能力を維持するため、ALSの進行度や症状に適した理学療法です。この選択肢が正解です。
ワンポイントアドバイス
ALSの理学療法では、無理のない運動や適切な装具の使用を通じて、患者のADLをできる限り維持することが重要です。過剰な抵抗運動や高強度の訓練は避け、エネルギー効率を重視した支援を行いましょう。また、症状の進行に応じた段階的な介入が必要です。