第51回

第51回理学療法士国家試験 午前問題12

65歳の女性。慢性心不全。自宅でめまいと失神発作とを認めたため来院した。来院時の心電図(別冊No. 4)を別に示す。この患者にみられるのはどれか。

  1. 洞性頻脈
  2. 心室頻拍
  3. 心室期外収縮
  4. Ⅰ度房室ブロック
  5. Ⅲ度房室ブロック

解答解説

正解は5.Ⅲ度房室ブロックです。

心電図には、P波とQRS波が独立して記録されており、P波の間隔が一定、QRS波の間隔も一定ですが、P波とQRS波の間に規則的な関係がありません。これは心房と心室が完全に分離して興奮している状態を示し、Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)の所見です。Ⅲ度房室ブロックでは、心室への電気伝導が完全に途絶え、補充調律により心室が収縮します。めまいや失神発作もこの状態に関連する症状です。

選択肢の解説

  1. 洞性頻脈
    洞性頻脈は洞結節からの興奮が通常より速く発生する状態です。P波とQRS波は正常な関係を保ちながら速い頻度で現れるのが特徴です。本症例ではP波とQRS波が独立しており、洞性頻脈ではありません。この選択肢は誤りです。
  2. 心室頻拍
    心室頻拍は心室からの異常興奮が速い頻度で発生する状態で、心電図では連続する広いQRS波形が特徴です。本症例では心室頻拍に特有の波形は見られません。この選択肢は誤りです。
  3. 心室期外収縮
    心室期外収縮は、通常の洞調律に混じって異常な広いQRS波が単発的に出現する所見です。本症例では不規則な単発のQRS波は確認されず、この選択肢は誤りです。
  4. Ⅰ度房室ブロック
    Ⅰ度房室ブロックは、心房から心室への伝導が遅延する状態であり、心電図ではPR間隔の延長(0.2秒以上)が特徴です。本症例ではP波とQRS波の関係が完全に失われており、Ⅰ度房室ブロックとは異なります。この選択肢は誤りです。
  5. Ⅲ度房室ブロック
    Ⅲ度房室ブロックは、心房と心室の電気活動が完全に分離する状態で、心電図ではP波とQRS波が規則的でありながら独立して記録されます。本症例の心電図はこの特徴を示しており、正解です。

ワンポイントアドバイス

心電図を読む際は、P波、PR間隔、QRS波の間隔や形状を確認し、それらの関係を把握することが重要です。Ⅲ度房室ブロックではP波とQRS波が独立して現れるため、心房と心室が別々に興奮している状態を即座に認識する練習をしておきましょう。この状態ではペースメーカーが必要となることが多いです。