65歳の男性。脳梗塞。右片麻痺。発症5日目。意識レベルはJCS〈Japan coma scale〉Ⅰ-1。全身状態は安定し、麻痺の進行も24時間以上認めないため、リスク管理(リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン2006に基づく)を行いながら、ベッドアップを開始することとした。適切なのはどれか。
- ベッドアップ前、動悸を訴えているが実施する。
- ベッドアップ前、安静時SpO2が85%であったので実施する。
- ベッドアップ後、脈拍が100回/分なので中止する。
- ベッドアップ後、呼吸数が18回/分なので中止する。
- ベッドアップ後、収縮期血圧が120mmHgから170mmHgに上昇したので中止する。
解答解説
正解は5.ベッドアップ後、収縮期血圧が120mmHgから170mmHgに上昇したので中止する。です。
ベッドアップ後に収縮期血圧が120mmHgから170mmHgに上昇する場合、急激な血圧の変動が脳出血や再梗塞のリスクを高めるため、中止が必要です。脳梗塞後のリハビリテーションでは、血圧の急激な変化が最大のリスク因子となるため、ガイドラインでも収縮期血圧の管理が重要視されています。
選択肢の解説
- ベッドアップ前、動悸を訴えているが実施する。
動悸の訴えがある場合、心血管系への負荷が高まっている可能性があるため、原因の評価が必要です。この状態でベッドアップを実施するのは不適切です。この選択肢は誤りです。 - ベッドアップ前、安静時SpO2が85%であったので実施する。
安静時のSpO2が85%の場合、低酸素血症が疑われ、呼吸循環器系の評価が優先されます。この状態でベッドアップを実施するのは危険であり、不適切です。この選択肢は誤りです。 - ベッドアップ後、脈拍が100回/分なので中止する。
脈拍が100回/分は、生理的範囲内であり、ベッドアップを中止する基準には該当しません。明らかな頻脈(例えば脈拍120回/分以上)や心拍リズムの異常がない限り、ベッドアップを継続できます。この選択肢は誤りです。 - ベッドアップ後、呼吸数が18回/分なので中止する。
呼吸数が18回/分は正常範囲内(12~20回/分)であり、ベッドアップを中止する理由にはなりません。この選択肢は誤りです。 - ベッドアップ後、収縮期血圧が120mmHgから170mmHgに上昇したので中止する。
血圧の急激な上昇は、脳出血や再梗塞のリスクを増大させるため、直ちに中止する必要があります。この場合は医師と連携し、血圧の安定化を優先すべきです。この選択肢が正解です。
ワンポイントアドバイス
脳卒中後のリハビリテーションでは、血圧、脈拍、呼吸数などのバイタルサインのモニタリングが非常に重要です。特に血圧の変動は再梗塞や脳出血のリスクに直結するため、収縮期血圧が180mmHgを超える場合や急激な変動が見られた場合は、直ちに中止する判断をしましょう。