歩行障害がある患者の頭部MRIのT1強調冠状断像(別冊No.6)を別に示す。腰椎穿刺を行い髄液を排出させたところ、歩行障害が改善した。最も考えられるのはどれか。
- Parkinson病
- 正常圧水頭症
- 脳梗塞
- 脳出血
- 慢性硬膜下血腫
解答解説
正解は2です。
正常圧水頭症(Normal Pressure Hydrocephalus, NPH)は、脳脊髄液の吸収障害により脳室が拡大し、脳を圧迫することで特徴的な症状(歩行障害、尿失禁、認知機能障害)を引き起こします。腰椎穿刺で髄液を排出し、症状が改善するのはNPHに特徴的な診断所見です。
各選択肢の解説
- Parkinson病
Parkinson病では歩行障害(小刻み歩行やすくみ足)が見られることがありますが、髄液排出による症状の改善は期待できません。MRIでも特徴的な脳室拡大は見られないため、不適切です。 - 正常圧水頭症
正常圧水頭症では、脳室拡大とともに「歩行障害」「尿失禁」「認知機能障害」の3主徴が見られます。髄液排出後に症状が改善するのが特徴であり、これが正解です。 - 脳梗塞
脳梗塞が原因の歩行障害は部位によって異なりますが、髄液排出で症状が改善することはありません。脳室拡大も通常は見られないため、不正解です。 - 脳出血
脳出血が原因で歩行障害が生じることがありますが、MRIで脳室拡大が見られず、髄液排出による症状の改善もありません。不適切です。 - 慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫では、血腫が脳を圧迫することで歩行障害や認知症状が見られる場合があります。しかし、髄液排出による改善は期待できないため、この選択肢は不適切です。
ワンポイントアドバイス
正常圧水頭症の診断には、Tap Test(腰椎穿刺で髄液を排出する試験)が重要です。この試験で症状が一時的に改善する場合は、NPHの可能性が高いとされます。また、MRIで脳室の拡大を確認することが診断の重要なポイントです。「歩行障害」「尿失禁」「認知機能障害」の三徴候を必ず覚えておきましょう。