第53回

第53回理学療法士国家試験 午前問題34

多発性硬化症において、頸部を前屈すると頸部から下肢まで電撃痛が放散する徴候はどれか。

  1. Gowers徴候
  2. Lhermitte徴候
  3. Patrick徴候
  4. Tinel徴候
  5. Uhthoff徴候

解答解説

正解は2です。

Lhermitte徴候は、頸部を前屈した際に頸部から下肢にかけて電撃のような痛みが走る現象です。この徴候は、多発性硬化症(MS)や脊髄圧迫病変、後索障害などで見られます。頸椎の屈曲により脊髄後索が伸張され、病変部に刺激が加わることで痛みが生じると考えられています。

各選択肢の解説

  1. Gowers徴候
    Gowers徴候は、筋力低下のある患者が立ち上がる際に四肢を使いながら起き上がる動作のことを指します。主に筋ジストロフィーなどの筋疾患で見られるため、今回の問題には該当しません。
  2. Lhermitte徴候
    Lhermitte徴候は、頸部前屈時に発生する電撃痛を特徴とする徴候で、脊髄後索の病変が原因です。多発性硬化症の典型的な症状として知られており、今回の正解です。
  3. Patrick徴候
    Patrick徴候は、股関節疾患の評価に用いられるテスト(FABERテスト)で、股関節の可動性や痛みを調べる際に観察される徴候です。神経疾患とは関係がないため、不正解です。
  4. Tinel徴候
    Tinel徴候は、末梢神経を叩打した際にその神経支配領域に放散痛やしびれを感じる現象です。手根管症候群などの末梢神経障害で見られるものであり、今回のケースには該当しません。
  5. Uhthoff徴候
    Uhthoff徴候は、多発性硬化症において体温上昇や運動後に症状が悪化する現象です。電撃痛とは関係がないため、不正解です。

ワンポイントアドバイス

Lhermitte徴候は、多発性硬化症の診断で重要な手がかりとなる症状です。また、多発性硬化症では他にも、視神経炎や運動・感覚障害、Uhthoff徴候などが見られることがあります。疾患の特徴を包括的に押さえておきましょう。