第53回

第53回理学療法士国家試験 午前問題14・15

14.19歳の男性。基礎疾患はない。自転車エルゴメーターを用いた運動強度を次第に上昇させて運動終点まで運動負荷試験を行ったときの酸素摂取量の測定結果を図に示す。

  1. 酸素摂取量は運動強度に依存して直線的に増加する。
  2. 酸素摂取量は運動開始時に最大値に達する。
  3. 酸素摂取量は運動強度に比例せず、早期に一定値となる。
  4. 酸素摂取量は最大酸素摂取量の値に達する。

解答解説

正解は4です。

酸素摂取量(VO₂)は運動強度の増加に伴い直線的に増加しますが、心肺機能の限界を超えると最大酸素摂取量(VO₂max)に達し、それ以上は増加しません。この最大値は個人の運動能力を評価する重要な指標です。図が示す結果も、運動負荷の増加により最終的にVO₂maxに達したことを示しています。

各選択肢の解説

  1. 酸素摂取量は運動強度に依存して直線的に増加する。
    初期段階では酸素摂取量は運動強度に比例して増加します。しかし、VO₂maxに達した後は直線的な増加が止まり、酸素摂取量は一定になります。したがって、この選択肢は部分的に正しいですが、不完全なため不正解です。
  2. 酸素摂取量は運動開始時に最大値に達する。
    酸素摂取量は運動を開始した瞬間に最大値に達することはありません。運動の強度が上がるに連れて徐々に増加し、VO₂maxに達します。このため、この選択肢は誤りです。
  3. 酸素摂取量は運動強度に比例せず、早期に一定値となる。
    酸素摂取量は運動強度に比例して増加します。早期に一定値になるわけではなく、VO₂maxに達するまでは増え続けます。このため、この選択肢は誤りです。
  4. 酸素摂取量は最大酸素摂取量の値に達する。
    VO₂maxは酸素摂取量の上限を示し、図が示す測定結果からも酸素摂取量が最終的にVO₂maxに達していることが分かります。この選択肢は正しいです。

ワンポイントアドバイス

最大酸素摂取量(VO₂max)は心肺持久力を評価する代表的な指標です。 高いVO₂maxを持つことは、持久力の向上や健康の維持に重要です。持久的トレーニング(ランニングやサイクリングなど)によってVO₂maxを高めることが可能です。試験では「VO₂maxの特徴」や「運動負荷試験の結果」に関する問題がよく出るため、特徴を押さえておきましょう。


15.全身持久力改善のために必要な運動負荷量(ワット)として正しいのはどれか。

  1. 50
  2. 100
  3. 200
  4. 300
  5. 350

解答解説

正解は3です。

全身持久力を向上させるためには、心肺機能に適度な負荷を与える必要があります。通常、有酸素運動による持久力改善に適した運動強度は、最大酸素摂取量(VO₂max)の50~75%に相当します。自転車エルゴメーターでは約150~250ワットが目安とされ、選択肢の中では200ワットが適切です。これにより効果的に全身持久力を高めることができます。

各選択肢の解説

  1. 50
    50ワットは負荷量として非常に低いため、全身持久力を改善するには不十分です。このような低負荷運動は、体力の低い人やリハビリテーションの初期段階には適していますが、持久力向上には効果が限定的です。
  2. 100
    100ワットは適度な負荷ですが、全身持久力を向上させるためにはまだ不足しています。特にトレーニング経験者や中級者以上にとっては強度が低いため、有効性が低いです。
  3. 200
    200ワットは一般的に全身持久力を高めるための運動強度として適切です。この負荷では心肺機能が効率的に刺激され、持久力の向上に寄与します。問題文の意図に最も合致し、正解です。
  4. 300
    300ワットは負荷量として非常に高く、短時間で疲労が蓄積するため、持久力改善を目的とした有酸素運動には不向きです。この強度は、筋力やパワーを向上させる高強度トレーニングに適しています。
  5. 350
    350ワットは非常に高負荷であり、持久力改善ではなく、高度な運動能力を持つアスリート向けの負荷レベルです。一般的な持久力トレーニングでは使用されません。

ワンポイントアドバイス

持久力トレーニングの運動強度設定では、VO₂maxの50~75%が効果的な範囲です。運動負荷量を適切に設定することで、心肺機能の向上と疲労のバランスを保つことができます。また、トレーニングでは負荷量だけでなく、運動時間や頻度も重要です。