第53回

第53回理学療法士国家試験 午前問題8

68歳の男性。胸部大動脈解離(Stanford分類B型)に対して軽カテーテル的ステントグラフト内挿術が行われたところ、術後に単麻痺症状がみられた。ASIA評価表の結果を示す。この患者のASIAの重症度スケールと脊髄の損傷部位との組合せで正しいのはどれか。

  1. B ―――― 脊髄の後方
  2. C ―――― 脊髄の前方
  3. C ―――― 脊髄の後方
  4. D ―――― 脊髄の前方
  5. D ―――― 脊髄の中心部

解答解説

正解は2. C ―――― 脊髄の前方です。

解説

ASIA評価スケールは、脊髄損傷患者の機能状態を分類するためのツールです。今回のケースでは以下の点に注意します。

  1. 運動機能:評価表ではL2右が4、左が5、それ以外の筋力スコアが正常であることから運動機能の軽度低下が認められます。
  2. 感覚機能:前方の感覚(温痛覚)が障害されていることが示され、後方の深部覚(位置覚)は正常です。
  3. ASIAスケールの分類:これらの結果より、ASIAスケールはC(運動機能が温存されつつも、筋力が3未満ではない)に該当します。

以上の観点から、損傷部位は脊髄の前方、重症度スケールはCが正解です。

各選択肢の解説

  1. B ―――― 脊髄の後方:Bは運動機能が完全に失われている場合に分類されるため、今回のケースに該当しません。
  2. C ―――― 脊髄の前方:今回のケースの評価と一致し、正解です。前方の感覚が障害されていることが根拠です。
  3. C ―――― 脊髄の後方:感覚障害が前方の感覚に限定されているため、後方は誤りです。
  4. D ―――― 脊髄の前方:ASIA Dは筋力が3以上であり、今回のケースよりも運動機能が良好な状態を指します。該当しません。
  5. D ―――― 脊髄の中心部:脊髄中心部の損傷では深部覚も影響を受けるため、今回のケースには当てはまりません。

ワンポイントアドバイス

ASIA評価では感覚と運動の評価を分けて判断し、損傷部位を特定する練習が重要です。また、脊髄の前方と後方で支配する感覚(前方:温痛覚、後方:深部覚)の違いを押さえておきましょう。