46 歳の男性。右中葉肺がん。入院して化学療法と放射線療法を行い、来月に胸腔鏡下肺部分切除術を予定している。6 分間歩行距離は 560 m で、経皮的動脈血酸素飽和度は 95 % 以上に保たれ、ADL は全て自立している。正しいのはどれか。
- 術前から咳嗽練習を行う。
- 術前から上部胸式呼吸の練習を行う。
- 術前はベッド上の安静に努める。
- 術後 1 週はベッド上での体位排痰法を中心に行う。
- 術後 3 か月は修正 Borg 指数で 2 程度の運動療法を行う。
解答解説
正解は1. 術前から咳嗽練習を行うです。
肺切除術前の理学療法では、術後の呼吸機能を保つための準備が重要です。咳嗽は分泌物の排出や気道のクリアランスに必要不可欠な機能です。術後の肺合併症を予防するために、術前から咳嗽練習を行い、効率的な咳嗽動作を習得させることが推奨されます。
各選択肢の解説
- 術前から咳嗽練習を行う
この選択肢が正解です。
術後の肺合併症を予防するために、術前から咳嗽練習を実施することは極めて有用です。術後に肺分泌物が溜まりやすくなるため、効率的な咳嗽を術前に指導しておくことが重要です。 - 術前から上部胸式呼吸の練習を行う
この選択肢は誤りです。
術後の呼吸機能を維持するためには横隔膜を積極的に活用する腹式呼吸の練習が推奨されます。上部胸式呼吸は十分な換気が得られない場合が多く、不適切です。 - 術前はベッド上の安静に努める
この選択肢は誤りです。
術前の安静は筋力や体力の低下を招き、術後の回復を妨げます。術前から適度な運動や呼吸訓練を実施することが基本です。 - 術後1週はベッド上での体位排痰法を中心に行う
この選択肢は誤りです。
術後早期からの離床や歩行訓練が肺合併症の予防や体力回復に効果的です。ベッド上のみに限定することは推奨されません。 - 術後3か月は修正Borg指数で2程度の運動療法を行う
この選択肢は誤りです。
術後3か月は運動強度をある程度高めたプログラムが可能な時期です。修正Borg指数2(非常に楽)は運動負荷が低すぎ、体力の向上には不十分です。
ワンポイントアドバイス
肺がん術後の合併症予防には、術前の呼吸リハビリが不可欠です。咳嗽練習や深呼吸運動は痰排出を促し、術後肺炎を防ぎます。6分間歩行距離や酸素飽和度を参考に患者の状態を把握し、適切な負荷を設定します。術後は早期離床を進め、体位排痰法を活用して肺換気を改善します。患者の体力や症状に合わせた柔軟な計画が回復を支えます。