第54回

第54回理学療法士国家試験 午後問題47

糖尿病の運動療法で正しいのはどれか。

  1. 食後すぐに開始する。
  2. 運動強度はBorg指数17前後で行う。
  3. インスリン治療中の患者は禁忌である。
  4. 尿中ケトン体陽性の場合は有酸素運動を行う。
  5. 増殖性網膜症がある場合、強い等尺性収縮は推奨されない。

解答解説

正解は5です。

糖尿病の運動療法において、増殖性網膜症を有する患者では、高い眼圧が視力悪化や網膜剥離を引き起こすリスクがあるため、強い等尺性収縮や強度の高い運動は推奨されません。運動療法は血糖管理に有効ですが、患者の状態や合併症に応じた調整が必要です。

選択肢の解説

  1. 食後すぐに開始する。
    誤りです。食後すぐの運動は低血糖のリスクを高めるため、適切ではありません。食後1~2時間程度の間隔を空けて運動を開始することが推奨されます。
  2. 運動強度はBorg指数17前後で行う。
    誤りです。Borg指数17は非常にきつい運動を示し、糖尿病患者の運動強度としては適切ではありません。Borg指数11~13(軽い~ややきつい)程度が推奨されます。
  3. インスリン治療中の患者は禁忌である。
    誤りです。インスリン治療中の患者でも運動療法は可能ですが、運動に伴う低血糖に注意し、インスリンの投与量や食事を調整する必要があります。
  4. 尿中ケトン体陽性の場合は有酸素運動を行う。
    誤りです。尿中ケトン体陽性の場合、運動を行うと糖新生が促進され、高血糖が悪化する可能性があります。この状態では運動療法は避けるべきです。
  5. 増殖性網膜症がある場合、強い等尺性収縮は推奨されない。
    正解です。増殖性網膜症では、強い等尺性運動や高強度運動は眼圧の上昇を引き起こし、網膜の損傷リスクを増加させるため避けるべきです。

ワンポイントアドバイス

糖尿病の運動療法は、血糖コントロールの改善に有効ですが、患者の合併症や状態に応じた安全な運動強度の設定が重要です。特に増殖性網膜症や腎障害などの合併症を有する場合は、適切な運動種目や強度を選ぶことが必要です。また、低血糖予防のための食事やインスリン調整も忘れずに行いましょう。