第59回

第59回理学療法士国家試験 午後問題15

5歳の女児。脳性麻痺による痙直型両麻痺。屋内での主な移動は車椅子で、監視下でPCW〈postural control walker〉を用いた歩行練習をしている。この児に対する動作指導で最も適切なのはどれか。

  1. 割座保持
  2. 補助具なしでの歩行
  3. 立位保持装置での立位
  4. バニーホッピングでの移動
  5. 膝立ち位でのキャッチボール

解答解説

正解は 5. 膝立ち位でのキャッチボール です。

膝立ち位は体幹と股関節の安定性を高める重要な訓練姿勢であり、痙直型両麻痺の児にとって適切な練習方法です。この姿勢でキャッチボールを行うことで、上肢の機能向上とともに体幹の筋力やバランス能力が強化され、歩行練習や日常動作の向上に役立ちます。膝立ち位では足関節や膝関節にかかる過剰な負担を避けることができるため、痙直型麻痺児において有効な訓練方法とされています。

各選択肢の解説

  1. 割座保持
    割座(W座り)は、股関節内旋や骨盤後傾を助長するため、痙直型麻痺の児にとって不適切な姿勢です。長時間この姿勢をとると関節変形のリスクが高まります。この選択肢は誤りです。
  2. 補助具なしでの歩行
    PCWを使用して歩行練習をしている状況から判断すると、補助具なしでの歩行は現時点での能力を超えており、安全面からも不適切です。この選択肢は誤りです。
  3. 立位保持装置での立位
    立位保持装置は関節変形の予防や骨密度の維持に役立ちますが、体幹や上肢の動作を訓練するには膝立ち位の方がより効果的であるため、この選択肢は本問の最適解ではありません。
  4. バニーホッピングでの移動
    バニーホッピング(両膝を揃えて跳ねる移動)は下肢に不均衡な負荷をかけ、筋緊張を増強させる可能性があるため、痙直型麻痺児にとって不適切です。この選択肢は誤りです。
  5. 膝立ち位でのキャッチボール(正解)
    膝立ち位は、下肢への負担を軽減しつつ体幹の安定性を高める効果があり、痙直型麻痺児に適した練習です。キャッチボールを組み合わせることで、動的なバランス能力や上肢の協調性を向上させることができます。この選択肢が正解です。

ワンポイントアドバイス

痙直型両麻痺の児に対する動作指導では、下肢の負担を軽減しながら体幹の筋力やバランス能力を向上させる訓練が効果的です。膝立ち位での動作練習は、これらの目的を達成するための優れたアプローチであり、動作の応用力を高めることが期待されます。